第27課題 クワガタカップ04
鋭い一重が見下ろしてくる。
「
「あー、ってことは、
実体では初めましてだけど、普通はなんて挨拶するのかなこういうとき。さっき一応やり取りあったもんね。精神的な。
そんなことを迷っていると向こうから頭を下げられた。
「お礼を言うわ。
「なんで?」
イミフだった。アタシがいなかったら優勝だったのに。負け惜しみを言いに来たならわかるけど。
「私、自分が雨女だからって腐ってた。でも、そのおかげで雨の日に強くなって、雨の日の勝率がすごく高くなった。でも、自分が出る試合全部が雨とは限らない。雨の降らなかった日は普通に負けていたわ。だからある日から、天気予報を見るようになってしまった。降水確率が高い日を選ぶようになった。そして降水確率が0%のときは出ないようになった。光の当たる場所へ行きたかったのに、いつしか自分から光の当たらない場所を選んで戦うようになっていた。今日あなたに負けて気付いたわ。本当に強い人は、天気なんて関係ない。雨が降っていても、自分から日の当たる場所へ行ける人なんだって」
そう言えば、アタシがマッチしたときに光が射して来てた。つまりあれ、
「ウォール・トゥ・クライムでは雨とか関係なしに勝負だね」
しかし
「私は大きな大会での優勝がなかったからウォール・トゥ・クライムには出場できないわ。試合を選び過ぎた罰ね」
自嘲かと思ったけれど、そうじゃなかった。
「次は、晴れるといいわね。雨の日に勝ってきた私だからわかるけれど、勝っても衣服がびしょ濡れなのは嫌でしょ?」
彼女は雨でピタピタになったノーションパンツの両サイドを摘まんで離した。パンッと乾いた音が鳴った。
「それな」
なんだかんだ言って晴れた日に勝ちたい。
□ □ □ □
ロッカールームは男女兼用で、それぞれロッカーにカーテンが備え付けられている仕様だった。だからアタシと
ベンチ一つ分のスペースを360度覆うカーテンを閉めて、そこに
「な、なになになに!?」
明らかに動揺している。でもこっちも死活問題だし。
「パンツがピッタリ貼りついちゃって脱げないの。それに雨でいつもより疲れて、力が入らないからさ」
アタシはロッカーからタオルを手にして腰をぐるりと覆った。それからベンチの上で横になってクライミングパンツのボタンを外した。
「脱がせて」
アタシの言葉に固まる
「早く。べたべたで気持ち悪いし、このままだと風邪ひいちゃう。着替えて早く水分補給とかしたいんだけど」
「あ、ああ、ああそうだよね! うん今すぐやるね!」
「下ろすよ!」
「ちょっ、ま!!」
——ズルーッっと下ろされると、一気に股下がスース―し始めた。それは良い。多分濡れたボトムを脱いだらそうなるから。でも、それだけじゃなかった。もっと奥の方までスースーする。
「それで、着替えのボトムは?」
アタシの表情になにかを察したのか、
「ぬうぉおおおおおおおおおおおお!?」
□ □ □ □
ひと騒動あったけれど、
それに
「
「
雨上がりのアスファルトには水たまりが溜まっていて、青空を映し込んでいた。
「ウォール・トゥ・クライムの切符も手にしたし、これなら
「それにしてもこんなに秒で強くなっちゃって参っちゃうよね。こりゃ元カレもびっくりだわ。
ワッハッハッハッと爽快に笑った。
とても心地のいい風が吹いた。夏にしては気が利いてるじゃん。
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