第09課題 二人の始まり03
いやーラッキーラッキー。まさかドローン部の部長が同級生の
そんなこんなで
「ごめん。すぐには決められないよ」
なんで!? いや、あの流れは絶対に行けたはずだったのに。いったい
そうして、今ピョンピョンジムに二人してきたわけで。
「おお。ペア候補か。賢そうな顔しているな。きっと上手く行く」
ピョンピョンがどちゃくそ適当なこと言って来たけど、でもアタシもそれくらいのことしか言えないから否定もできない。
「一回登ってみるね」
アタシは一度クリアした7級の課題をやって見せた。ドヤッ!
「すごいね。降りたり登ったりを軽々と。なんだかまるで
「銀ショー? なにそれ。いい部屋発見すんの?」
「平成かっ!」
ピョンピョンがツッコんだ。ママが時々口ずさんでた歌は、平成のCMらしかった。
「将棋の駒だよ。真後ろと真横以外はどこにでも進むことができるすごい駒」
「へー。アタシすごいんだ。そんで
「今アタシがやったのが7級で、挑戦してるのが6級の10番。あの水色のホールドの奴」
今度はクリアしたことがない課題。まずは行けるところまで行ってみる。
「こっからどうすればいいと思う?」
壁から振り向いて人一人分下にいる
「右隣の大きな半球体は使えないの? そこを行けば簡単そうだけど」
「スローパーはつるつるしてヤなのー」
「お前なあ」
ピョンピョンが呆れた声を出した。
その横で
「やっぱスローパー使わないとダメなのかなあ。力技でなんとかできるくないって思ったけど、なんともならない?」
「いや、なんとかしてみよう」
唇にくの字に曲げた人差し指を押し当てて、沈黙。目を細めて、頭をフル回転させているように見える。いつものナヨナヨした雰囲気とは全然違う、戦士みたいな表情だった。アタシは自分が壁に居ることも忘れて
「一回左上のホールドを左手で掴めない? ……
一瞬遅れで左上を見る。あぶね。普通に落ちるところだった。
「掴める……かなぁ」
「不安かな。ちょっと遠いもんね。けど、飛びつく感じで行けないかな」
「サイファーか」
「なにそれ」
「飛びつきの技名だ。飛びつきって言やぁランジだが、斜め横を狙うような形のはサイファーって言うんだ。こう、足を振り込みたいに使ってな。初心者が簡単にやれるもんじゃないが、確かにその方法ならいけなくもない……か?」
「普通の人なら行けなさそうですよね。でも
「
「ありがとう。飛びつけたら真下のホールドに左足を乗せて。右足がぶらつくと思うけど、それをどこのホールドにも乗せないで振り子みたいに使って勢いを付けて、今度は右上のホールドを掴んで、その下にあるホールドに足を乗せてみて」
言われた状態を頭の中で想像。アタシは左斜め上に飛びつくために、大きく手を伸ばして右側に振って、飛んだ。
——ガッ。
「ヨシッ!」
ピョンピョンの声。
衝撃が指先から肘に抜けて腕全体がもげそうになる。だけどなんとか飛び移れた。
グンッと体が振られたけれど、なんとかしがみつけた。
「おお! すげえじゃねえか!」
言われてホールドを見るとGと書かれていた。ゴールだ。
すごい。え。あんなに無理ゲーくさかったのに、言われた通りにやったら出来た。
嬉しくて急いで降りる。
「ヤバイよ
「じょ、
「うん。なんでアタシが行けるってわかったの?」
「
「ケーマ?」
「将棋で、斜め前に進む駒のことだよ。
「なんだかよくわかんないけど、アタシのポテンシャルを見抜いてたってことだよね。やっぱり
「今の一回で決めていいものなのかな。それに僕、多分足を引っ張るよ」
「なにを根拠にそんなこと言ってんの! 今だってピョンピョンの言う通りにしてたら一生クリアできなかった課題だったんだよ。あのボーボーマッチョ、マジ役立たず」
「なんでオレのせいになってんだ。あとボーボーマッチョってなんだ!」
横でピョンピョンが声を荒げた。目の前の
「
「ドローン飛ばせる友達が他にいな――いや
「嘘を吐かなくてもいいよ。気持ちだけは受け取っておくね」
さすがに無理があったか。でも
「それで、ペアを組んだとして、そのあとはなにか目標があるの?」
「勝ちたいんだ、とにかく。負けっぱなしは嫌だから」
「
「あ、じゃああのクール眼鏡を説得すればいいんだ」
「まあ、端的に言えば」
「だったらアタシに任せなさーい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます