第04課題 二人の出会い04
ウォール・トゥ・クライム当日。
僕はガチガチに緊張しながら現地の最寄り駅へと向かった。待ち合わせに遅れてはならないと思い、30分前に到着してしまった。乗り継ぎをミスって電車二本分も遅れてしまったと言うのに、だ。
スマフォのトークアプリを開いて「着いたよ」と送ろうとして指が止まる。早過ぎて気持ち悪がられないだろうか。それに、僕が早くついてしまったことを伝えたとて彼女が乗っている電車の速度が早まってくれるわけではない。寧ろ無駄に焦らせてしまったら申し訳ないじゃないか。急ぐあまりに人とぶつかって揉め事に発展したら……ってさすがにそれは考え過ぎか。
「おっはよう! 早いじゃん!」
「っぴゃー!」
突然の声に、心臓がひっくり返った音が口からまろび出た。
「なんちゅう声出してんの!」
きゃらきゃらと言う笑い声。振り返るとそこには
モデル体型の彼女はただ立っているだけで絵になる。エナメルのハイヒールからスラッとしなやかに伸びた美脚はミニスカートに隠れるまで惜しげもなく太陽に晒され、褐色の肌がいつにも増して健康的に見えた。細い腕を包むざっくり編みのふわっとした蛍光色のニットがやわらかなイメージを醸し出しており、上下の色彩とシルエットのコントラストを色濃くしていた。
学校で見ているときからずっときれいな人だと思っていたけれど、いつもとは違う大人びた雰囲気がある。いつも通りに結ばれたウェーブの効いたツインテールも、どこか違って見えるから不思議だ。
「ってーかだっせー!」
そんな風に感動していた僕を指して思いっきり笑う
「あ、え」
自覚はあった。オシャレとかわからないから。
「ごめん……」
「え、あ、嘘!? いや、ごめごめごめごめん! 嘘だって冗談だってそんな泣くなって」
「いや泣いてはないよ」
「ならいいんだけど、なんかすごく落ち込んでたからさー。ほら、普段ウチらノリ軽いからさ。アタシがだっせーって言ったらいつも『おめぇもな!』って言われるから」
「おめえもなって、そんなわけない」
真剣な声で返した。誰なんだ。
「ほえ?」
「
彼女は口を真一文字に結んで、それからくるっと背中を向けた。
「あ、あんまりそう言うこと言うなし」
いつもと違う弱々しい語調だった。彼女はトンと一歩踏み出した。合わせて僕も歩く。
「あと、冗談でもダサいって言ってごめん」
「え? いいよ。実際ダサいし」
へらっと笑って返した。
「うっ……いやだから違くて。うーん。じゃあ、うん。そーだ。今日大会見終わったら帰りに服屋でも寄って帰る? アタシが見立ててあげよっか」
「ほんと!? すごく嬉しい。ありがとう!」
僕はスキップしそうになるのを我慢しながらその分ちょっとだけ早歩きになった。
こんなことになるなら僕もダサくて良かったなと思った。
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