第03課題 二人の出会い03
ゴールデンウィークに入る前の部活終わりに
「取れたぞ」
「わー! 本当に取れたんだね。やっぱり御曹司の名は伊達じゃないね」
「俺が言う分にはボケになるが、お前が言うとなんだか卑屈な妬みに聞こえるな」
「え、ごめ」
まさかウケ狙いでボケていたとは。事実過ぎてツッコめなかった。
「まあ冗談は置いておいて」
「それも冗談だったの!?」
いつもクールで真面目だから冗談やボケがわかりづらい。
「これでウォール・トゥ・クライムを見に行けるな」
「うん! ありがとうね」
「現地でいろいろ教えてやろう……と思ったんだが」
歯切れの悪い
「やっほ! 当日はよろしくね、
……は?
――んんっ!?
思考が停止した。
なんでドローン部の部室に
「どういう……?」
「俺が出場するドローンの大会が、ウォール・トゥ・クライムとガッツリ被っていたことを忘れていた。チケットは貰ってしまったし、
「な、な……!?」
突然過ぎる。心の準備ができてない。
「えー、いっちー嫌そう。ヤなの?」
「い、いやいやいやいやいや!」
「え、マジでヤなの? なんかごめん」
「ちが、いやいやいやいや嫌じゃないです!」
僕の必死の否定に
「あっはっは! 変なの。マジ草、超えて
「
「んーん。原って書いてあるからクソデカ原っぱだと思って言っただけ」
「そういうわけで、ボルダリングペアのルール等は
理由はわかったけれど、そんな、二人でなんて。
そりゃあいつか
「なんだ?」
僕の心中を悟ったのか、
「う、いや、だってこれじゃまるでデートじゃないか」
「ほほう」
「え、なに
「え!?」
「無理寄りの無理なの!?」
「ええ!?」
「あ、見て見て、ぴえん超えてパオンの顔」
そのパオンの顔と言うのを
今度は僕に向き直る。
ぐっ、じょ、冗談とは思えないほど切ない顔をしているじゃないか。普段は強気に吊られているまなじりが悲しげにタレて眉尻もへたり込んでいる。これは放っておけない。よく流せたな、
「嫌なの?」
「嫌じゃないよ! 全然全然嫌じゃない! むしろ
頭を抱えて膝から崩れ落ちたが、上からは笑い声が落ちて来る。
「
今後二度と出て来ないユタカくんを登場させて、屈託なく笑ってくれた。また助けられた。彼女はどうしてここまで、僕の下心に鈍感でいられるんだろう。それとも僕なんか元々男の領域に入れて貰えてないから下心も易々と
「すまんな
「了承したら襲ってくるの?」
「いや、多分襲わない」
「だよねー。まっ、
「なんで童貞なのもわかるの!?」
「ギャルの直感? こちとら経験豊富ですから?」
「け、経験ほぅ――」
言いかけて思わず喉を鳴らしてしまった。ニマニマとした笑顔を向けられる。うう……恥ずかしい。
「かく言う俺も童貞なので人のことは言えないが」
さらりと頼んでもいないフォローが入った。斜め上過ぎて逆に困る。もしかしてこれもボケなのか? いつものポーカーフェイスでまったくわからない。
「え!? マジで? そんなにカッコイイのに? でも、モテてる実感あるっしょ?」
「さあな。なんにせよ女は面倒だ。扱いづらい」
「うわなにコイツ、ヤッバっ! みんな
多分
僕が
しかし一つだけ気掛かりなことがある。
「大会、見に行けなくてごめん」
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