第2話 異世界転移
ここは…どこだ?
地震が起きて数分。気づけば見知らぬ土地に飛ばされていたことに気づいたのは
窓の景色を見てからだ
学校ごとどこかの場所へ移動という非現実的な現象を受け入れるのにはそう時間がかからなかった
なぜなら
「ステータスオープン。やっぱり…ここは異世界だ」
立体映像めいたウィンドウがステータスオープンの声で開かれ開示される
ネット小説で有名な異世界への転移が行われた証拠がまさに揃っている…!!
「なあ獅子神。ここドコだよ?」
間抜けな声で話しかける男子 加藤カズマは僕に尋ねるが
そんなもの自分で考えろと悪態を吐くことなく僕は毅然とした態度で返した
「異世界転移…かな?」
「はぁ!??マジで!??じゃあ俺たち異世界に来たのか!!ウヒョォォォォオオオオオオオオオオッッ!!!!!」
何が喜ばしいのか知らないがどうせ俺TUEEハーレムとか期待しているのだろう
バカだコイツ。前から頭の出来が疑わしかったがここまでヤバかったのか…
「ねえ。怖いよ悠馬…」
「大丈夫。僕がついてる」
怖がっている僕の彼女。甘咲 ユイナの頭をなでて落ち着かせる
僕だって怖いがここで彼女を怖がらせればパニックを引き起こす可能性がある
パニックは連鎖反応だ。誰かが悲鳴を上げればたちまち混乱は波紋を広げていく
幸いクラスのみんなは怯えより期待感が勝りアホみたいに盛り上がっている連中が多数
お気楽連中で助かった。ここで下手に怖がられては収拾がつくかどうか怪しい
万が一パニックに陥ったら僕が先導してあげなきゃな
どちらにしてもクラスのイニシアティブは僕が引き受けなきゃ始まらない
「みんな!楽しそうなところ悪いけどいったん落ち着こう!
まずは情報整理と今後のことを…」
「今後は私たちが決めますよ」
「え?」
僕の言葉をさえぎって何者かがクラスに割って入る
そのことに誰も気づかなかったし驚き声を上げる子もいた
フードをかぶった。声の高さと体格からして女性だろう
「ようこそ異邦の方々
ここはカディムシア王国。
僭越ながら力の強いあなた方の区域を丸ごと頂きましたわ」
***********
何が僭越ながらだ、これでは誘拐犯となんら変わらない
だがその気持ちを押し殺しあくまで冷静に平静を保って質問を投げる
「貴女は?」
「失礼、自己紹介がまだでしたわね
わたくしは宮廷魔術師のリミディアと申します
あなた方をここへ連れてきたのは私で
王の意向によりあなた方に来ていただいた次第でございます」
何を勝手な…という前に
「なあなあ!!てことはここ異世界??じゃあステータスとかあんの!
あ、なんか出た!!これがステータスオープンか!!」
「マジマジ!??」
「異世界!??すごいじゃん!!私たちファンタジーの世界に来たんだ!!」
「お前のステータスどのくらい?ははははっ!!ザッコ!!!!」
「うっせーよテメエもだろうが!!!」
堰を切ったようにクラスメイトが騒ぎ出す。まったくバカどもが!!
今会話している人を敵に回したら僕たちの今後は保証されないんだぞ!!!
だけどおかげで冷静になれた。僕もこいつらと同じく感情に任せて激情していたかもしれない
「すみません。話をさえぎってしまい」
「いえいえ、見知らぬ土地に好奇心を抱くのは世界が違っていても同じですわね
そう、ここは異世界。あなた方が夢想する異世界。ヴィルヘンドと呼ばれる世界ですわ」
「びる…なに?」
「聞いたことない言葉ね。異世界語??」
「なーなーんなことよりさぁ!さっさとここ出ようぜぇ~?
せっかく異世界来たんだからハンターやろうぜ?」
はぁ…なんでこいつら空気読まないんだ…。さっきは冷静になれたが撤回
こいつらどうにかしないとな…
「たびたびすみません。話を聞くところ王様のご要望で僕たちをここへ転移させたということでしょうか?」
「その通りです。今いるここはカディムシア王国の辺境の地
大勢の皆様を安全に移動させるため建物ごとの転移をさせていただきました。
この建造物の構造は把握しました
これから玉座の間へ移動しますわ」
そう言って会話を切りミリディアと呼ばれる女性がタンッと杖を床に叩いた瞬間
一瞬にして豪華絢爛な空間。王様がいると思われる玉座の間へ瞬時に移動した
見てみればクラスの人間だけじゃない。他のクラスのみんなや教員もまた一堂に会し広間に移動させられていた
そして玉座に座っているのはテンプレ通り冠をかぶった王様で
「ようこそ勇者候補諸君!!君たちには魔王を討伐してもらう」
テンプレ通りの展開が始まった
*************
色々検証。まず外には出られる。さっきはスキルの影響で異世界につながったらしいがOFF状態にすれば問題なく俺の知っている道路が広がっている
そしてもう一つの『スキル鑑定』であらゆるものの能力や値段が表記されている
「トイレットペーパーひとつで銅貨4枚…異世界行く前提かよ…」
『鑑定』とまたひとつ『換金』がありこのトイレットペーパーも自動で換金できるようで
消えた瞬間銅貨が出現する。これならわざわざ支度金をそろえる必要がない
ってそうじゃない…!やっぱ異世界に持っていきたいんだろこのスキル…!!
そして問題の『スキル:家』である。
まず異世界のどこに家を出現させんだよと思ったが
出てくるのは通路となるドアだけで家をポンポン出現させるわけではないらしい
スキル項目に【好きな場所に移動できる】と書いてあったのでドアを開けるたび別の場所へ移動できる。都合のいいことに目立たない場所に絞られており突然ドアが現れたら驚かれる心配はない。そしてないだろうと思って試した現実世界も移動できるんじゃね?ができた。やばい
気になったのがもう一つ
【家に入れるのはスキル発動者の任意のものだけである】
と俺が定めたもの以外は入れないらしい
何とも都合がいい。というか目立ちたくない俺のようなスキルで
この家というスキル自体俺を象徴しているのではないかと穿ってしまう
そして…この【スキル:家】だが…レベル1なのだ
スキルにレベル表記…これはまさか成長型みたいなやつか?
スキルの成長条件。俺がレベルを上げるのだろう
だがあいにくそんな見知らぬ土地でヒャッハーするほど命知らずではない
ましてや異世界。クマやゴリラよりもヤベーモンスターが普通に闊歩しているであろう世界に好き好んで喜ぶバカはいない
と何やらそう思いながらも自分の中で盛り上がっていたらしく懸命にスキルやら試して楽しんでいたことに気が付いた
とりあえず一服。インスタントコーヒーにお湯を注ぎ飲んでいると
【スキル:家のレベルが上がりました
スキル:家レベル2】
「えぇ…」
ただコーヒーにお湯入れただけでレベルアップ…?無論その程度でレベルが上がるはずがない。スキルではなく俺の話
家のレベル上昇の条件。それは多分
「家の中で活動…かな?」
【スキル:家のレベルが上がりました
スキル:家レベル3】
違ったらしい。どうやら何もしなくてもレベルが上がるようだ
それはまずい。レベルが上がるたびにこの警告を聞かなきゃならないのか…
そう思ったらウィンドウが開き
【警告をOFFにしますか?】
となんか問いかけてきた…!?怖!!
もちろんOFFで。いちいち警告を聞いてたらストレスがたまる
しかし、異世界とリアルを行き来できるんだよな?
なら行かないという選択肢もありだろう
というのもクラスメイトが転移した世界にかち合うのはごめんだ
なのでとりまゲームでも進めて小休止。
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――――――
そして2時間後
【スキル:家 レベル9999999999999999999999999999】
我ながら放置しすぎて反省している。いやまずレベルアップ止める手段がないんだけどね
たった二時間でレベル上がりすぎだろというか何もしてねえよ俺
そして家のレベルが上がったことにより項目も増えてききて
【スキルが追加されました。ゲーム装備を使用可能です】
ゲーム装備ってまさか…
ラバースを起動してヴィシャスを開く
ゲーム画面は依然として変わってないが
…試しに
「装備変更…」
全身がスクロールし元のジャージから一転
ファンタジーましましなヴィシャスの最強装備が具現化し俺がそれを装備している
そして何より…顔までゲームの主人公に変わってる!!いや別にそれはいいやと思ったら顔は戻った。
どうやら本当らしくゲームの装備まで俺のスキル範囲内となったらしい
だが顔を変えられるというのは好条件だ。クラスのみんなから素性を隠せる
やっぱり異世界行く方向性へ向けさせられてる気がする…!!
こんな都合のいい展開すぎるスキルあれば無双俺TUEEは必須。異世界に敵なし
なんなら現実世界も敵なし…かもしれない
何らかの作為がなければこんな展開はあり得ないと思いつつ
試してみたいという好奇心が勝ってしまうのはサガか
「脱、引きこもり開始!!」
引きこもり卒業を免罪符に最強装備にて異世界の扉を開いた
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