第14話


「ねえトッキー。トッキー?どこにいるの?」



その日もまた真夜中に起きていたあたしは、動けるようになってからトッキーを探してた。



起きたら挨拶しなきゃいけない。

挨拶はおはようって言って抱きついて、それからキスもすること。



そう教わってたから毎日の日課をこなすべく挨拶の対象を探していたんだけど、



「トッキー?」



呼べばいつも駆けつけてくれる存在がこの日ばかりは居なかった。



いつもと違う冷たくて暗くて、音のない廊下を彷徨う感覚はトッキーと出会う前までの自分の生活を思い出すほどだ。



消えることを願いながら、けれど身体が動くのは真夜中の数時間だけ。



渇望と現実の厳しさに辟易していた頃の感覚に似ている気がして呼吸が浅くなる。



「トッキー…!からってるの?!」



なんで姿がないのかと、叫んだところでなんの返答もない。

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