第3話 最高の日々
「また来てしまった。なんたること!なんたること!!!手ぶらで来てしまったぁァァア!!!!」
絶叫である。
どうやら私は眠った後ここに来てしまうらしい。お昼の出来事を考えたら、起きたら戻れるという事でいいのだろう。理解して、激しく自己嫌悪。私は何故この可能性を考え付かなかったのだろうか。
「分かっていたら地球の道具を片っ端から持って来たのに!」
この時ばかりは貧困すぎる自分の発想力に絶望した。目の前の事にしか気が向かない自分の性格を呪った。
だけど後悔しても時間は戻らないのだ。今やれる事をしなければ。
とにかく!
「スキル習得率アップがあるなら、ここで修行したらスキルを覚えて地球に持って帰れるって事で良いのよねっ?!」
そうと決まったら、次来る時に思い切り修行できる様に少しでも過ごしやすい環境に整備しよう。そうしよう!
次来る時は何を持ってこよう!どんなスキルをおぼえよう!とウキウキで考えながら私は適当に草や石や岩をひとつひとつ手に取って収納して地面を慣らしていく。
素手で!!
あらかた物を収納し終わりその場に座ろうと手の平で土をパンパンと叩いて慣らしながらその広さにだんだん嫌気がさしてきた。
「あー、これはスコップが要るわ。爪の中に土が入るぅ。服もドロドロ。起きてベッドが土まみれとか嫌なんだけど」
すると、爪の中から土がポロポロと落ちる。
「え!なにこれ」
服の汚れも落ちている。
即座にステータスを確認すると、新たに土魔法の文字。
「土魔法キタコレーーーー!!!」
私はテンションのままに土魔法でいろんな形を作る。
「これよこれ!異世界と言えば土魔法でしよー!まじか!土魔法と言えば何でも作れる魔法よね!!土の中の成分とか使ってそのうち金属とかガラスとか宝石とか作れる様になるのかも?やばーい!万能魔法きたわあー!」
手始めにテーブルや椅子を作る。いびつになって何度も作り直す。最初は触ったらすぐ壊れたけど、ガチガチに固めて表面をツルツルにしてと夢中で何度も何度も練習する。
「やっぱりこれ、何でも作れるやつだ!!」
遠くからアラームの音が微かに聞こえてきた。
「えぇ?!もうそんな時間?!」
私は急いで土魔法で服や手を綺麗にして目覚めに備えた。
――――――
水曜
自宅のベッドで目が覚める。
「あー……無事帰ってきたわー」
思わず声に出してしまった。隣で背中向けて寝ていた夫が目を擦りながら振り返る。
「おはよう。大丈夫かい?嫌な夢を見たのかい?」
私の髪に触れ気遣う様な顔の夫に私は満面の笑みで答えた。
「おはよう!嫌な夢じゃないよ。最高の夢!」
夫と息子が朝ごはんを食べている間に鼻歌を歌いながら夫のお弁当を作る。息子は学食で食べるらしいので必要ない。
「おはよう母さん」
「おはよう。〜♪♪〜」
しっかり冷ましたご飯を彩りを気にしながらレンジ可能なお弁当箱に隙間なく詰めて、栄養を考えてサラダも別に用意する。保冷剤とともにお弁当袋に入れて完成だ。
「何あれ?機嫌良いね。」
「うん。良い夢を見たらしいよ」
2人を送り出して玄関で思わずガッツポーズ。
「今日から最高の日々が始まる!頑張るぞー!」
まずは昨日終わらなかった裏庭掃除だ。憧れの家庭菜園は目前だ。土魔法で土を柔らかくしてからーの
「庭の雑草を一括収納!」
触らなくても目視で収納できるのは確認済み。
そしてアイテムボックスから出す時は念じるだけで任意の場所に置ける。一度収納した雑草は庭の隅に取り出し積んでおく。乾燥させてゴミのかさを減らすのだ。
勢いに乗って私は物置の整理を始めた。と言っても異世界に持っていける物を探すついでに、頭の中のリストに従って仕分けしながら整理して置いていくだけの簡単なお仕事だ。キッチン用品も普段使いの最低限を残して殆どをアイテムボックスに詰めていく。
草ボーボーだった庭、なまじ広いせいで処分もせずに押し入れに積み上げただけの使わない物、引っ越しを機に実家から引き上げてきて押し込んであった物、気にはなっていたのに後回しになっていた事が嘘の様に今日1日で片付いた。なんだこの達成感。
「アイテムボックス最強じゃん……」
暗くなってから帰ってきた夫も息子も、庭や押し入れが片付いた事に全く気付いた様子は無かったけどね!!
名前 久我 唯芽 くが ゆめ
レベル1
HP 32
MP 50
力 12
体力 16
素早さ 9
器用さ 28
魔力 25
運 18
スキル習得率アップ アイテムボックス
鑑定 土魔法
⭐︎⭐︎⭐︎
序盤は明るい展開が続きます。
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