第2話

デスクメッセ


 拝啓
 私は、夜間科の1年D組の女子生徒です。
いきなりのお手紙失礼します。
うちは、母子家庭なんです。この春に北海道から転入してきました。



 知り合いも友達も誰もいなくて、無駄に生徒数がマンモスの、この学校はとても居心地が悪くて、誰にも向かい合えなくて、この机に思いをしたためています。




 不愉快な思いをさせたなら、スルーして下さい。お返事いただけたら、飛び上がって喜びの舞!
 


 俺は、ふと良からぬことが心に浮かんだ。
もし、これが、イタズラだったら、いや、罠だったら最悪の事態に追い込まれそうな気しかしない。



 思わず教室を見回した。
「コラっ新川、キョロキョロするな」
担任に大声で怒鳴られて超現実に引き戻されたんだ。机の上なんかにメッセージ書いて、クラスメイトに見つかったらめんどくさいだろうし、ただの落書きかも知れない。そのまま放っておこう。



 そう思って俺は、机の上に書かれたメッセージを消すこともしなかった。
ただ、机に書かれたメッセージなので、デスクメッセと勝手に命名しておいた。そして、返信もせずに放置したんだ。
 



 あれから数日が経った。私が送ったメッセージはスルーされたんだ。消しゴムで消しながら何故か涙が出てきた。



 いまだに友達も出来ないし、孤独感の圧に押し潰されそうなのに、机上のメッセージ迄、既読スルーされて、私の中でこの学校に居場所さえなくなった気がしてきた。



 俺は、登校すると、先ずデスクメッセを確認してしまう。一昨日も、昨日も、放置されていて、ポツンと机の上で返信を待っているように感じた。



 ところが、今席について、いつものように机を確認したらメッセージが消されていたんだ。え?消えてる!




 存在しているものが消えると、何故か逆に気になるものだな。小さな喪失感を感じて、気がついたら鉛筆を握っていた。よし、下校するまでにデスクメッセを書こうと決めた。





 朝を迎えた。東の空からお日様が世界を照らし、眩しいくらいの陽気なのに、私の心は真っ暗な闇路だね。足取り重く登校して自分の席に座ったの。




 一瞬目を疑った。え?え?えーーー!
机の上に落書き??


「名無しさんへ。デスクメッセありがとう。うちは父子家庭です。君と逆のパターンですね。普通科に通う1年D組の男子です。メッセ交換、よろしくお願いします!」




 さっき迄撃沈していたのに、ぱぁーーっと心が晴れ渡ったの。デスクメッセかあ、何か新しいフレーズだね。そうかあ、君は男子で父子家庭なんだね。メッセ交換ってワクワク、なんだか学校にくるの、楽しみになってきたわ。
 

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デスクメッセのリラックマ ようき @youki_46497

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