#3 敗走

<前回まで>


はじめての逆転ガチャで僧侶のマリアンヌ、盗賊のフィリプが仲間になった。

この最強の布陣で、三人で「はじまりの奈落」に挑む!!


前衛 【なし】・主人公・【なし】

後衛 僧 侶・【なし】・盗賊


――――


「出直してこい」


意気揚々とはじまりの奈落に挑もうとしたところ、国王救出を行う騎士団のイケメンからこんなようなことを言われた。


「せっかく渡したお金でアイテムを買ってないじゃないか。

 準備金の意味が分かっているのか?」


えっ、あの、でも序盤で買えるアイテムってそこまで強くないと思うし、いまはいったん貯めておいて、必要になった時に必要なアイテムを買った方が効率的で……などと、言い訳をしたい気持ちがあったのだが、騎士団のイケメンはかたくなであった。


今回の国王救出は我々のパーティだけで行うわけではなく、王国騎士団が結成した救出隊と一緒に進むことになる。


救出隊にはネームドキャラが3人おり、それぞれ「騎士団長」「騎士団のイケメン」「騎士団のかわいいエルフ」の3人である。(名前は忘れた)


まあ、ダンジョンで何があるかはわからないしな……。

ということで、薬草をいくつか購入し、再びはじまりの奈落に向かったところ、無事に中へはいることができた。


はじまりの奈落とは、主人公が目覚めたあのダンジョンだった。

あの3人の盗賊と戦った奈落の入り口には見物人が集まっており、口々にこの国王救出に関しての感想を述べている。


ダンジョンに向かった知人の無事を祈るものもおり、ダンジョンで死んだ者たちの死体が積み上げられていたり、いかにこの冒険が危険なものであるかをじわじわと理解させてくれる。


そしてようやくダンジョンの中へ。

改めて外から中へ入るとずいぶんと暗い。

マッピングされていない迷宮は心臓に悪く、突然襲い掛かってくる敵にハラハラしながら進む。そして、私はまったく想定していないことに遭遇する。


敵――だいたいがゴブリンだ――の攻撃が、僧侶や盗賊にガンガン向かって行っているのだ。待って待って、僧侶が先に死んじゃったら回復役がいなくなる――。


混乱の中、とにかく戦線を立て直さねばならないといったんダンジョンを離脱。

街とダンジョンの間を右往左往し、ようやく理由が判明した。


前衛 【なし】・主人公・【なし】

後衛 僧 侶・【なし】・盗賊


この編成の場合、戦闘にはいると


前衛 僧 侶・主人公・盗賊

後衛 【なし】・【なし】・【なし】


こうなるのである。


ああぁ……そうなの……っ?

ってことは、やはり冒険は6人パーティが基本ってことになる。

僧侶や盗賊は、前衛で守ってこそ輝く役職なのだ。


ただ……。

そうなると、あと3人は骨から蘇生逆転してそろえなければならない。


もうちょっとダンジョンを探索してから、逆転ガチャしたかったんだけど……という、他のソーシャルゲームなら通用する感覚が、このゲームでは全然通用しないのだということを突きつけられた瞬間であった。


正直、ダンジョンに数歩入ったところでゴブリンに敗走したばかりで、結局何が強いかすらわかっていない。職業には戦士、騎士といった前衛っぽい名前があるのでおそらくそれらの冒険者を蘇生すればいいのだろうけど、主人公は「放浪者」であり、いまいち強さがぴんと来ない。


でも、やるしかない。

他のゲームでは最強キャラランキングをすぐ見る私だが、ウィザードリィは堪能したいので、そういった野暮なことはしない。


意を決して、骨に右腕を伸ばすことした。

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