第28話 許嫁登場
数日後、家にいると
向こうから許嫁がやってくるという。
こちらから出向くべきでは……
と言ったが、未来の夫を
わざわざ出歩かせるわけには
いかないとかなんとか……。
転移陣を描いて
鍛錬場で
迎え入れることになった。
「そういえばなんで
いつも鍛錬場に
転移陣を書くんだ?」
……と言うと
転移陣を描いている
八雲が一言。
「ここが一番
地脈──つまり
地面の幻力が集まる
ところだからですね」
「そんなところを
なんで鍛錬場に?」
「一番力を
発揮しやすい場所を
鍛錬場にするのは
普通のことだと思いますが」
それもそうか……。
まぁそのせいで
毎度毎度八雲が
転移陣を手書き
しなきゃいけないわけだが。
書き置きしておくわけには
いかないのかな。
勝手に転移されても困るか。
転移陣を描き終えると
しばらくして光り輝き始めた
理事長が使うときとはまた違うよな。
他の人も使いやすいように
弄ってあるのだろうか。
「ごきげんよう、旦那様」
────転移してきたのは
白銀と呼んでふさわしい少女だった。
和洋折衷の純白の衣。
それはウエディングドレスを思わせる。
艷やかな銀髪は腰まで伸び、
肌も陶器のごとく艷やかだ。
彼女は恭しく一礼し、こちらを見た。
「わたくし、百合宮
以後、お見知りおきを」
一瞬気圧されてしまう。
圧があるというよりその荘厳さに。
可憐にして神聖。
それが彼女を彩る言葉だった。
「ああ、よろしく。
俺が周防珀斗だ」
そんな俺を見て
彼女はくすりと笑った。
「お美しい方ですわね
もっとこう……
いかつい方を想像してました」
「俺だって七歳だぞ?」
「ええ、でも聞く話は
どれもこれも
七歳にして特等だとか
さっそく幻術師を斃したとか
既にいろんな女を
手籠めにしているとか……
わたくし、怯えてましたのよ」
わざとらしくクラリと
倒れるような仕草を見せる黎亜。
「じゃあどうだ?
失望したのか?」
「ふふ、いえ、安心いたしました
今後共よしなに……」
ふふふ、と微笑む黎亜。
う~~~ん、可愛い。
妹の瑠奈なんて
目を輝かせて
お姫様を見るような
目で見ている。
「せっかくだし
今日一日一緒に
過ごしてはいかが?」
母さんがそんな事を言う。
まぁ……許嫁だ。
仲良くなって損はないだろう。
「う~~ん、でも
何して過ごそうか……」
「なんでもいいですわよ
ああ、そうだ!
普段なにをしてらして?」
ぽん、と手を叩く黎亜。
普段やってることか……。
そうだ、自室でアニメでも見るか。
「じゃあ俺の部屋行こうぜ」
「え、あ、あの、
さすがにそういうことは
気が早いと言うか、その」
顔を赤らめているが
俺に引っ張られて連れて行かれる黎亜。
何を想像してるんだ、この子は……!!
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