第26話 一学期の終わり

 結局、実技試験はあれで良かったようだ。

 楽々と合格した俺達は

 余裕を他の生徒に

 見せつけることとなった。


 まぁ、と言っても不合格な生徒など

 ごくごく一部しかいなかったけど。


 さて7月後半。

 俺達は体育館に集められると

 ついに理事長があの宣誓を出した。


「え~~それでは諸君!!

 夏休みだ!!」


 途端に生徒たちが湧き出す体育館。

 待ってましたと言わんばかりだ。

 理事長がこらこらと

 生徒たちをたしなめる。


「なお、8月には林間学校がある

 出来れば参加するように!!

 それから宿題や夏期講習も

 忘れちゃだめだよ。

 それじゃあ解散!!」


 校庭に設置された転移門から

 次々と生徒たちが帰っていく。


 俺も荷物をまとめて帰ろうとすると

 夏芽と冬見が話しかけてきた。


「珀斗はやっぱり家に帰るの?」

「ああ、林間学校には出るよ」

「私も実家に顔出さないとな~~」

「わ、わたしも……」


 ちょっと嫌そうにするふたりとも。

 実家関係がよろしくないんだろうか。

 まだ7歳だというのに……。


「ま、まぁ良かったら

 俺の家に来てもいいしさ」


「本当!? 本気にするわよ!!」

「わ、わたしも……!」


「ああ! 親に聞いておくぜ!!」


 喜んで近づいてくる二人。

 なんだか可愛らしい。


 まぁうちの親ならいいと

 言ってくれるだろう。


 一応電話とかLINEとか

 交換しておきたいが、

 ふたりとも持ってなさそうだしな……。


 俺もパッドしか持ってない。


「お前ら実家の電話ってわかる?」

「私の家、電話ないわよ?」

「わ、私の家はあるけど……」


 う、う~~~ん。

 うちの家でも

 黒電話ぐらいあるというのに……。

 仕方ない、八雲なら

 連絡方法もわかるだろ。


「じゃあ最悪理事長に連絡してもらうよ」

「便利よね理事長」

「わ、私はあの荷物

 ドボドボ出せるのがやりたい……」

「荷物多いもんな、おまえ……」


 【操作】、難儀な術式だ。

 そういえば影に荷物って

 入れられるのだろうか。

 

 どこに沈んでいくか

 わからないから怖くてやらなかったが。

 一回試してみるか。


 話もそこそこに俺の番が

 来たので転移陣に乗る。

 転移陣を操作しているのおっさんだった。


「もうええんか」

「話はまた別の機会にするよ」

「OK!! ほな帰らせるで!!」

「じゃあおまえら、また今度な!!」


 俺が二人に手を振ると振り返してくれた。

 よし、これにて一学期終了だ!!


 そう考えると、

 俺はもう実家に戻っていた。

 







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