第25話 橙地蔵で初戦

 洞窟を見つけた俺達。

 もちろんカンテラや

 懐中電灯は持ってきている。


 カンテラは腰に下げられるから

 便利……だが。

 今回は冬見に持ってもらうことにした。


「そういえばアンタらの

 幻獣で索敵できないの?」


「夜鼠か? あれまだ

 使いこなせてないんだよなあ」


「視界の共有…

 …や、やってみる……!」


 そう言って冬見が

 懐中電灯をぬいぐるみに渡す。

 そのままぬいぐるみが突っ込んでいった。


 冬見自身は目を瞑っている。

 あれで視界共有できるようだ。


「う、う~~ん

 奥になんかデカい

 鬼みたいなのがいる……」


「オークってわけか」


「こっちには気づいてないみたい。

 あ、その奥には宝玉

 みたいなのがある……」


「それが宝物だろうな」

「こっそりとれない?」


「む、難しい……」


 となると突っ込むしかないか。

 夜鼠で遠隔攻撃……。


 ダメだ、俺まだ視界共有とか

 出来ないんだよな。


「よし、それじゃあ挑むぞ」

「それしかないわよね……」


 俺達は洞窟に突入することにした。

 オークの前まではただの通路。


 オークのいる部屋に入ると、

 ボゥッ、と壁の松明が燃え出した。


 オークはまるでゲームに

 出てくるような緑色の肌。

 それに腰蓑に棍棒を持っている。


 違いがあるとすれば

 頭に角があることだろうか。


「ふぁっふぁっふぁっ!!

 よく来たな、貴様ら!!」


「うおっ、このオーク喋るのか!!」

「先生の1人が動かしているのよ……」

「そういう事は言わない!!」


 怒られた。

 まぁせっかくRPG風にしているのに

 そんな事言われたら萎えるよな。


「我を倒せば宝玉が手に入るぞ!!

 かかってくるといい!!」


「よし!!」


 黒孔雀を引き抜こうとすると

 夏芽に止められた。


「ここは私にやらせてくれない?」

「かまわないけど……」

「が、頑張れ~~」


 後ろを振り返ると

 冬見が壁に隠れている。


 まぁ、ぬいぐるみが武器なんだから

 本体が何処にいようが構わないけどさ。


 夏芽がバッグから取り出したのは

 降魔刀──橙地蔵だ。


 試してみたかったらしい。

 引き抜くと、バチバチと

 橙色の稲妻が走る。


「ククク、さぁ来るがいい!!

 我には生半可な攻撃は通用せぬぞ!!」


 次の瞬間には

 オークは頭上から股下まで

 真っ二つになっていた。


 ……凄まじい速さだ。

 降魔刀で強化されてるだけのことはある。


「ふぅっ、でもこれ使えるの

 一瞬だけなのよね

 それ以上だと身体が

 ボロボロになっちゃう……」


 そう言って夏芽が橙地蔵を納刀した。

 居合が向いてそうだな、こいつ……。


「わ、わぁすごい……!」


 パチパチと背後で冬見が手を叩いている。

 なんにせよ、これで宝玉ゲットだ。


 …………ちょろい実技だったな。

 俺何もしてないよ。


 まぁ7歳相手にとんでもない

 実技試験なんて出されても

 困るんだけどさ。


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