第24話 学期試験の始まり


 7月に入り、いよいよ学期試験が

 開始となった。


 まぁ、7歳の筆記試験など

 お遊びみたいなもので……。


 問題は実技の方だな。


 瞬く間に俺達は幻影学園を囲う森──。

 樹海へと案内された。


「では実技試験の内容を伝えるで。

 この森の何処かにある

 宝物を見つけることや」


 おっさんがニコニコ笑顔で言う。

 宝物って具体的に何だよ。


「その宝物って?」


 生徒の一人が同じ疑問を

 持ったのか質問した。

 それを聞いて、おっさんが

 ニカッと微笑んだ。


「宝物は宝物や。それは自分で見つけや」


 なんじゃそりゃ。

 でもそんなノリで

 実技試験が始まってしまった。


 名簿順か実力順か。

 よくわからない順番で

 森へと突っ込まれる俺達。


 ついに俺達の番になった。

 黒孔雀よし、いざというときの

 サバイバルグッズもよし。


 夏芽や冬見もちゃんと

 自分の分のバッグを用意してきている。


 ……冬見のバッグはなんかパンパンだな。


「それ何が入ってるんだ?」


 思わず冬見に質問してしまった。

 わたわたと慌てながら

 質問に答えてくれる。


「え、えと……愛着のある

 操作できるものを

 詰めてみたんだけど……」


「なるほど、いいね」

「そこまでいくと小泉先輩みたく

 【収納】の術式が欲しくなるわね……」


 夏芽が冬見のバッグを見て嘆息する。

 まぁ、けっこう重そうだよな。

 本人気にしてないけど。


「り、理事長の【転移】ほどじゃないけど

 あれも便利だよね……」


「ああ、特に一瞬で

 武器をあれこれ切り替えらるのがいい」


「撃ち出すこともできるしね。

 まぁ私たちの方が

 いい術式だと思うけどっ」


 ……などと話しながら、先に進む。

 ひとまず俺が先頭。


 蜘蛛の巣が引っかからないよう、

 いい感じの棒を振るう。


 しばらく歩いていて気づく。

 闇雲に歩くよりも索敵結界で

 痕跡を探したほうがいいんじゃないかと。


「夏芽、索敵結界だ」

「え?」


「おそらく幻力の痕跡があるはずだ。

 それを辿ったほうが早い」


「な、なるほどね……」


 夏芽が印を結び、

 強く集中する。


 しばらくして、

 北側に向かって指を指した。


「あっちの方から幻力を感じるわね」

「す、すごい……!

 夏芽ちゃんもう

 索敵結界が使えるんだ!!」


「ふん、まぁね」

「私なんかまだまだなのに……!」


 きゃいきゃいと仲睦まじげに話す二人。

 流石に2ヶ月ちょっと

 一緒に訓練したことはある。

 もうすっかり仲良しだ。


 さて、夏芽の指示通り北に向かうと……。

 なにやら怪しげな洞窟を見つけた。


 これみよがしだなぁ……。




 

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