第23話 一時の休息
さて梅雨の季節になってきた。
学期試験ももう間近。
体育館は連日のように
取り合いになっている。
武器研究会のような
小さな部では取り合いに勝てないので
雨の日は仕方なく休み。
その分を勉学に割り当てているが……。
小学生、それも一年生の勉強なんて
わざわざ復習するまで
もないんだよな……。
仕方ないので、図書館に入り浸り
面白そうな本を探していた。
漫画はないがライトノベルならある。
もはやライトノベルを
読み耽るしかないのだ。
夏芽は暇なのか、
わざわざ俺についてきた。
冬見も同じくだ。
「あんたよく習ってない
文字なんて読めるわね」
「余裕だろ」
でも小学一年生には
そういう気持ちになるのかな。
と思っていたが、
冬見もしっかりラノベを読んでいる。
「漫画、置いててほしいわ
仕方ないから購買部で買ってこよっと」
「で、でも夏芽ちゃん
こういう本も面白いよ……
これなんか魔法学園の話なんだけど」
「そんな分厚い本読みたくないわ……」
大ヒットベストセラーなのに……。
いい機会だから児童書でも読み漁るか。
けっこう面白いのが多いんだよな、
児童書。
夏芽が漫画を買いに行き
俺達が図書室で本を読んでいると
冬見が話しかけてきた。
「珀斗くんは、あ、頭もいいよね
尊敬しちゃう……」
「たいしたことないよ、俺なんて」
「や、やっぱりお家の方針なの?」
「…………まぁね」
転生したから、なんて
言っても信じてくれないだろうし
信じたら信じたで
面倒なことになりそうだ。
お家の英才教育ということにしておこう。
実際、英才教育自体はしてるしな。
「す、すごいなぁ……。
わ、私なんて実家でも
落ちこぼれ扱いで……」
「冬見の術式
けっこういいと思うけどな
ちょっと解釈が狭いんだよ」
「というと?」
「もっと条件を広げる。
愛着ってのが難しいよな
動きもシンプルにしたい」
「ふ、ふむふむ……!」
「ぬいぐるみが自由自在に
動けるんだから
武器だって動かせるはずだぜ?
何なら人間だって……」
「が、頑張ってみる……!」
俺の言うことを熱心に聞く冬見。
夏芽と違って──
いや最近は夏芽も素直だけど、
素直なのはいいことだなぁ。
「そういえば本なんて
愛着もてないか?
おっさん……安藤先生なんて
本のページで戦ってたし」
「ああ、本なら
確かに愛着持ちやすいかも……!」
「今度試してみようぜ!」
……なんてことを言ってると
夏芽が大量の漫画を買って
帰ってきた。
「最新号だ、やったぜ」
「私が先に読むのよ!!」
「と、図書室ではしずかに……!」
そんな風に漫画を奪い合いながら
俺達は梅雨の時期を過ごしたのだった。
ああ……以前の課外授業のときに
ゲームでも買っとけばよかったな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます