第16話 炎の男


 俺はもちろん無事だ。

 爆発するのは予測できたから


 影をドーム状に展開して防御したのだ。

 しかしおっさんと夏芽は……。


「ふぅ、びびったびびった

 派手にやらかしてくれるわ」


「た、助かったわ先生……」


 夏芽の方は

 おっさんがページを

 ドーム状に展開し防御したようだ。


 ひとまず脅威は去ったが……

 俺達の任務は

 アイツらを倒すことだ。


「逃がしちゃったな、おっさん」


「いや大丈夫や。

 索敵結界で痕跡を追えばええねん

 金剛ちゃん頼むで」


「え、ええ……わかったわ

 でもこの惨状はどうするわけ?」


 そう、皆織タワーの一階は

 完全にぶっ壊れている。


 もはや瓦礫の山だ。


「理事長がなんとかしてくれる

 ワイらは先を急ぐで」


「了解よ!」

「本当に大丈夫かなぁ……」


 理事長が頭を

 抱えている姿が見える。


 しかしここまで出来るってことは

 少なく見積もって相手は一等クラスってことか。


 特にあのシャボン玉野郎は驚異的だ。


 夏芽が印を結び、

 少しばかり集中する。


「……いたわ、北東に逃げてる」

「北東ってどっちだよ!?」

「あっちよ!!」


 夏芽が瓦礫から飛び出て

 走り出す。


 周囲には爆発を確認しようと

 人だかりができていた。


 まぁ、後始末は幻術で

 なんとでもなるとして……。


 北東だな。

 あいつらいったいどこに

 逃げてるんだ……?


 そう思っていると

 ドンドンと郊外へと

 向かっていく。


 行き着いたのは

 寂れたボウリング場。


 あそこがアイツらのアジトのようだ。

 さて……今度こそ覚悟しろよ。


 さてボウリング場に

 入ろうとすると……。


「そういえば珀斗

 怪我してるでしょ?

 治してあげるわ」


「んあ? そんなの出来るのか?」

「ええ、私の術式でね!」


 そう言えば金剛家は

 感知や補助に特化した

 一族って言ってたな。


 シンプルな肉体強化

 だけじゃないのか。


「ちょっと座ってね」


 言われた通り地面に胡座をかくと

 負傷した背中に夏芽が手を当て

 そのまま温かいなにかを感じた。


 段々と痛みが引いてくる。

 数十秒後には完全に痛みが無くなっていた。


「おお! すごいじゃないか夏芽!」

「ふふん、そうでしょうとも!」


「よし、ほなボウリング場に入るで

 おそらくもう一人か二人ほど幻術師がおる。

 気をつけや」


 もう一人か二人……。

 さきほどですら少し危ういところだったのに

 本格的に倒せるか心配になってきたな。


 さて、ボウリング場の中には

 いくつものレーンがある。


 その上、無数の蜘蛛とあの繭。

 まだ捕まっている人がいたのか。


 そこで1人、

 ボウリングをしている男がいた。


「あ? なんなのおまえら

 敵、連れてきちゃだめでしょ」


「へへっ、すいませんボス!」

「ですがボスなら倒せるかと……」


 ボスとやらがこちらに気づいて

 ソファにおいてあった刀を掴む。

 鞘からして橙色のいかつい刀だった。


 ……俺はそのボスに見覚えがあった。

 多少年老いているが、間違いない。


 前世、俺を殺した男!!

 あの炎使いだ!!


「降魔刀か……気をつけやふたりとも

 あの男、そこそこやると思うで」


 おっさんが刀を引き抜きながらそう言う。


「降魔刀? 封魔刀とは違うのか?」


「封魔刀はあくまで術師の補助・封印が目的の刀。

 術式を制御できない術師のためのものや。


 対してワイらが持っている降魔刀は

 術式の強化を目的としている。


 …………つまりバフがかかってるんや

 封魔刀よりさらに希少やで」


「へぇ……!」

「あの刀の男はワイがやる。

 二人は他二人を!!」


 次の瞬間には、

 飛び出してきた炎の男が

 刀を燃やしなが斬り掛かってきた!


 おっさんも刀を使い、それを防ぐ。

 しかし周囲のページが燃えてしまう。

 あれじゃあ相性が悪いんじゃないのか!?


 後方の二人はたっぷりと

 シャボン玉と蜘蛛を用意して待ってるし……。

 ええい、面倒だなぁ!!


「夏芽、どっちと戦いたい!?」

「えっと……まだ蜘蛛のほうが戦えそう!」

「虫、大丈夫なんだな!」

「苦手よ!!」


 とりあえず黒孔雀を振るい、

 飛天を撃ち出す。


 大して消耗もないから

 撃ち得なんだよな、飛天。


 軌道にあるシャボン玉が爆発し、

 蜘蛛が真っ二つになっていく。


 その後を追うように夏芽が突撃していった。

 さて……どう来る!?














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