第12話 VS巨大蜘蛛
トンネルは雨水が流れ込む
仕組みになっており、
入り組んだ迷路のようになっていた。
水路の横にある道を
拙い足取りで俺達は進んでいく。
進んでいくと
当然光源が無くなったが
理事長がカラスから
懐中電灯を転移してくれた。
それを使って進んでいく。
すると──。
索敵結界を使っている
夏芽が拳を構えた。
「来るわよ、三体ほど……」
そう言って現れたのは
巨大な蜘蛛が三体。
2~3mはあるんじゃないか。
なんというかキモすぎる。
「いくわよ!」
夏芽が飛び跳ねて
蜘蛛の頭部に蹴りをかます。
それだけで蜘蛛は潰れてしまった。
俺は肩のカラスに懐中電灯を渡すと
黒孔雀を引き抜き、
勢いよく振るった。
「──飛天!」
トンネルの壁を伝って
螺旋状に飛ぶ飛天。
上手いこと夏芽を避けて
蜘蛛だけを輪切りにした。
「うわぁ、キッショ……」
臓物が溢れ散るが
やがて光となって消えていった。
死体が残らない。
幻獣特有の特性だ。
キンッ、と黒孔雀を
鞘に納める。
「これで全部か?」
「いや、奥に大量にいるわ。
注意しなさい」
「大変だな……」
しかし全部倒さなきゃ
どうしようもない。
仕方なく俺たちは
先に進むことにした。
やがてかなり大きいエリアに出た。
どうやら雨水をここに貯める
仕組みのようだ。
懐中電灯を周囲に向け、
調べてみると──。
天井から繭のようなものが
いくつも伸びているのがわかった。
夏芽が飛び出して繭を開く。
その中には意識を失った
男性が入っていた。
「これは……!」
「捕まった人たちだな。
保存食として捕らわれてるんだ。
理事長、救援を呼んでくれ」
『わかった。でも気をつけてくれ
恐らくその辺りに親玉がいるよ』
理事長が言うが早いが
なにかが天井から落ちてきた。
先ほどの蜘蛛より二回りはデカい蜘蛛。
きっと母蜘蛛だ。
俺はさっきと同じように懐中電灯を
カラスに預け、黒孔雀を引き抜く。
「珀斗! あの蜘蛛以外にも
いっぱいいる!」
「くそっ、視界が悪いんだよ!
理事長! 追い焚きしてくれ追い焚き!」
言われた通りカラスから
いくつもの蛍光ライトが飛び出してきた。
それによって照らされる周囲。
たしかに夏芽の言うとおりだ。
何体もの蜘蛛が天井から降りてきている。
──5,6,7、結構な数いるなぁ!
しかし逃げるわけにもいかない。
繭の数はその三倍はあるからだ。
「ゴギャッ!!」
バシュッ、と蜘蛛たちが糸を吐いてきた。
夏芽と同時に左右へと飛び跳ねる。
そのまま俺は飛天を繰り出し、
1体、2体と屠っていく。
「はっ! しょせんデカい蜘蛛だな、
こいつら!」
「油断しないで!
まぁ……負ける道理はないけど!」
ドゴォン!
……と夏芽も母蜘蛛の頭部を叩く。
ひしゃげる母蜘蛛。
夏芽は容赦なく
二撃目のかかと落としを繰り出した。
「ギィ! ギィ!!」
母蜘蛛を心配しているのか
周囲の蜘蛛たちが鳴く。
しかしこいつらは人間に仇なす害敵だ。
逃がしてやる道理は──ない!
「夏芽、しゃがんでろ!!」
「え!?」
「飛天──円舞!!」
そう言って、俺はくるりと回って
黒孔雀を振り回す。
その軌道の通りに、俺を中心として
飛天が飛んでいく。いわば回転斬りだ。
「ギィイイイイ!?」
これで地面にいた蜘蛛たちは
全員横薙ぎに切り裂かれた。
残すところ──あと1体。
「トドメぇ!!」
俺と夏芽が同時に飛び出し
蜘蛛の頭部に斬撃と打撃を与える。
当然ながら、
蜘蛛が無事で済むはずがなく──。
盛大に弾け飛んだ。
「ふぅ……
これでこのあたりの幻獣は全部ね」
夏芽が印を結び、索敵結界を展開する。
しかし周辺にもう幻獣はいないようだ。
『ありがとう! ひとまず帰投してくれ!
後処理はこちらでやる!!』
理事長のカラスがそう言うと、
カラスの羽が舞って円陣が出来る。
ここに入れってことか……?
しかし理事長、
転移を有効活用しすぎだな。
八雲の言ってた転移の術式持ちって
理事長のことだったのか……?
「ふふん、私たち
なかなかいいコンビじゃない?」
「ああ、なかなか良かったよ」
「最高って言ってもらえる!?」
「最高だった」
「…………えへへっ」
キリッ、としていた夏芽の顔が綻びる。
まぁ、まだ七歳。
褒められるのが嬉しいんだろうな。
ひとまず円陣に入ると、
視界がまたぼやけて
次の瞬間には校庭に立っていた。
理事長がにこやかに
パチパチと手を叩いている。
その脇には俺がカラスに渡した
回転焼きの紙袋が。
「お疲れ様!
まずシャワー浴びてきなよ!」
「ああ、そういえば
蜘蛛の体液でビチョビチョだな……」
そりゃあもうめちゃくちゃ
体液がかかっている。
殴ったり刀で斬ったりしているのだから
当たり前だ。
「体液も時間差で消滅するけど、
気持ち悪いでしょ?」
「うう……! 思い出させないで
くれるかしら!?」
「じゃあ風呂場まで向かうか……」
幻影学園には大浴場があり、
もちろん男女に別れている。
ひとまずそこに入るしかない。
「着替えなら用意しておくよ」
至れり尽くせりだ、助かる。
なにはともあれ──。
こうして俺達の初任務は終わった。
ふむ、意外と簡単だったな。
まぁ、特等級と一等級が組めば、
こんなものなのかもしれないが。
でも索敵結界──。
後で教えてもらおう……。
あれは便利そうだ。
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