第11話 まるでデートだな
俺達は街の探索を始め、
商店街で買い食いをしていた。
買ったのはいわゆる回転焼き。
大判焼きとか今川焼とか、
色々名前があるけれど……。
まぁそんな感じのやつだ。
「これ美味しいわね」
両手でそれをつまみ、
もむもむと食べる夏芽。
俺はそれを横目に見ながら
自分の分の回転焼きを
片手で頬張っていた。
「いいだろ、俺のおごりだ」
「あんたの家のお金でしょ」
「俺の小遣いだ」
「はいはい……」
少しばかり呆れる夏芽。
ちょうど自販機があったので
俺は缶コーヒーを買うことにした。
それを見て、夏芽が
意外そうに目を丸くする。
「あんたコーヒー飲めるんだ」
「別に普通だろ。無糖は飲まないけど」
「私、コーヒー苦手なのよね」
「なんで?」
「だって苦いし……
コーラとかのほうがいいじゃない」
そう言って夏芽が
ペットボトルのコーラを買う。
俺は炭酸苦手なんだよな。
なんとなく。
「でもコーラと
回転焼きって……合うか?」
「大判焼きでしょ?」
「回転焼きだよ」
「看板には大判焼きって
書いてあったけど!?」
しつこいやつだ。
俺は回転焼きで通す。
そう考えながら、
コーヒーを一口飲んだ。
砂糖が入っているので、
甘苦い独特の味だ。
俺を睨みながら
もくもくもくもくと
回転焼きを食べ進める夏芽。
そのまま一気にコーラを飲み干した。
あ、そんなに一気飲みすると
ゲップが……。
「…………けぷ」
可愛いらしいゲップだった。
口を抑えて恥ずかしそうにしている。
今のゲップぐらいならば、
別になんともないと思うけどな。
「……おかわり」
「ああ!? 俺の回転焼きを
まだ奪うつもりなのかよ!?」
回転焼きは
まだ脇に挟んでいる
紙袋に大量に入っている……が。
まだ俺から
搾取しようというのか……!
「索敵結界は疲れるの!!」
「しょうがねぇなぁ……」
それを言われちゃ仕方がない。
回転焼きを口に咥えると
紙袋を夏芽に渡した。
夏芽が飲み干したコーラを
ゴミ箱に捨て
紙袋を奪い取る。
そのまま
もしゃもしゃと
食べ始めた。
思わず顔が綻ぶ夏芽。
なんだかハムスターみたいだ。
「よし、食わしたんだから
頑張ってくれよ」
「ふんっ、言われなくても
わかってるわよっ」
そのまま食べ歩きながら
とことこと進んでいく。
しばらくすると、夏芽が
何かに気づいたかのように
入り組んだ路地へと歩いていく。
「なにか見つけたのか?」
「ええ、この先になにか強い幻力がある」
道なき道を
パルクールみたいな
要領で進む俺達。
その先には薄暗い
トンネルがあった。
おそらくは水道に
つながっているのだろう。
さて、どうするか……。
「行きましょう!!」
ううむ……。
行くしかない、か。
「ああ、気をつけろよ」
何が出てくるか
わかんないからな。
俺は袋から
黒孔雀を取り出し
腰に携えた。
──戦闘準備だ。
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