課外学習編
第10話 課外学習に行こう
俺が幻影学園に
入学してから数週間がたった。
今のところ
数人しかいない
クラスメイト達とは
よくやっていると思う。
先輩方とも交流があり
剣術や術式の使い方も
教えてもらっている。
いずれも優しい人たちだ。
出来ればもっと
人脈を増やしたいものだが
何分、忙しい人達が
多いそうだ。
中等部・高等部にも
なると一気に
任務の数が増えるのだとか。
となると本格的に
鍛えられるのは
初等部の間だけだな!
さて、課外授業とやら。
ペアの相手を
誰か一人選べと言われた。
俺が選ぶのなら……
そうだなぁ。
なんだかんだ夏芽が
一番戦闘慣れしてそうなんだよな。
ひとまず夏芽を連れて行こう。
一等だし、特等級の
課外授業でも問題ないはずだ。
そう思い、課外授業の当日。
晴れやかな日に
戦闘準備を済ませて
校庭へ来いと言われた。
黒孔雀を背負い
学ランを着て、向かう。
夏芽もいつもの格好で
腕を組みながら待っていた。
「遅いわよ!!」
「別に遅刻して
ないんだからいいだろ」
「それでも遅い!!」
「早く来たって
意味ないだろ!?」
「ははは、仲がいいねぇ」
俺達が口論していると
新妻理事長が
ポンッと姿を表した。
どうやらこの人
カラスに変身できるみたいだ。
俺達の様子を
空から観察していたのだろう。
「で、課外授業ってなによ
何でも私がぶっ潰すけど」
「授業をつぶしたら駄目だろ」
パンっ、と拳を叩き合わせる夏芽。
それに対して理事長は笑う。
「ははは、頼もしいねぇ!
それじゃあ今回の
課外授業を発表しよう」
「なんです?
もったいぶらずに
話してください」
「君たちには
町中に潜む幻獣を
倒してもらおう」
そう言って
カラスの羽から明らかに入らない
ホワイトボードが出てきた。
「場所は皆織市。ここでは
最近行方不明者が多く発生している。
ボクたちはそれを幻獣の仕業だと
思い、調査を君たちに頼むわけだ」
そう言って、理事長が
ペンでカキカキと町の絵を描く。
正直めちゃくちゃ下手くそだ。
皆織市……。
俺の前世勤めていた街に近いな。
まぁだからどうってことはないけど。
「それって幻術師の
可能性もないかしら?」
「あり得る。もし幻術師であれば
撤退してもらって構わないよ。
いくら特等と一等と言っても
まだ初等部の君たちには荷が重い」
「別にそんなことないけどっ」
正直、俺も負けるとは思わない。
だが幻術師相手の戦いなんて
したことはないからな。
きっと俺達にはまだ早いのだろう。
せいぜい鬼ごっこ
ぐらいしかしたことないし。
「もちろん僕がカラスでサポートする
以上だ。質問は?」
言われて俺は手を上げた。
「どんな幻獣かとか
目処はついてるんですか?
あと戦闘の痕跡は
どうすればいいでしょうか?」
ふむ、と理事長が頷く。
「目処は一切ついてない。
それも君たちが調べてくれ。
戦闘の痕跡などは気にしなくていい。
ボクがカラスで周囲に幻術をかける。
もちろんなるべくなら
少なめがいいけどね」
「了解しました。
一日で終わらない場合は?」
「転移門をカラスで用意する
深夜になったら帰還しなさい」
「はい」
「ま、一日で終わらせちゃうけどねっ」
聞いておくことは……
そんなところか。
それじゃあさっそく行ってみるか。
校庭に描かれた転移門に乗る。
すると周囲をカラスの羽が包み
次の瞬間にはどこぞの屋上に出ていた。
そこから街が一望できる。
なるほど、見覚えがある町だ。
町の中心にある皆織タワーも懐かしい。
「さて、それじゃあ
幻獣を探すか……。
どうやって探せばいいんだ?」
「あんたバカ?
授業で習ったでしょ」
「いや習ってない」
「……私の家だけか」
そう言うと、夏芽は
片手で印を結び、なにやら
唱え始めた。
ズズズズ……と
体に膜が張るような
違和感を感じる。
「今なにかしたか?」
「索敵結界よ。
これで幻力の痕跡を辿れるの。
あんた、戦闘しか出来ないのね」
「習ってないからな!」
逆にそんな小器用なことが
出来たのかこいつ……!!
「それ、なんで
幻獣狩りの時は
使わなかったんだ?」
「? どう考えても
相手といっしょに行動して
妨害したほうが速いでしょ」
「まぁ、それはそうだが……」
ルールの欠陥というやつだな。
「で、どうだ?
妙な幻力は捉えられたか?」
「う~~~ん
ここらへんじゃないかもね」
「まぁ索敵範囲がある分マシだな
それをやりつつ探索していこう」
「…………なんか
町中って初めてね私」
「ああ、俺たちってなかなか
家から出してもらえないもんな」
「あんたも? その割には
けっこう世間慣れしてそうだけど」
「年の功ってやつだな」
「同じ年でしょ」
ぶみぶみと足を
踏もうとしてきたから
回避してやった。
さて、屋上から降りるか。
……扉は鍵がかかってるな。
路地裏の壁を伝っていけば
目立たないし大丈夫か?
「おい、ここから降りられるか?」
「大丈夫だと、思うけど……」
「じゃあついてこいよ。
それとも抱っこしてやろうか?」
「はぁ!? バカにして……!」
ぷんぷんと地団駄を踏む
夏芽を置いといて
路地裏の壁を
壁キックの要領で降りていく。
うん、これぐらいなら
幻力の強化で余裕だな。
「わっ、わっ、わぁあああ!?」
夏芽は途中で失敗したようで
俺の頭上に落ちてきた。
仕方なく幻力で体を
強化して受け止める。
結局、お姫様抱っこする
形になってしまった。
「あ、ありがと……」
「おまえ身体強化の
術式なんだから
これぐらいこなせよ」
「う、うるさいわねっ!」
足をジタバタさせるので
ゆっくりと降ろす。
さて、路地裏の外
本通りには人々が
歩く姿が見えた。
黒孔雀は──袋の中だし
まぁ小学生が出歩いても
変な時間帯ではないか。
それじゃあ街の探索を始めるか!!
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