第5話 猫、カラスに怒りを覚える

『大丈夫か!』

 上から物を落とされて無事な訳がない。猫はひどく心配した様子でユニアルに駆け寄った。

《大丈夫デス》

『そうか、なら良かった』

 ユニアルの様子に変わったところがないのを見て猫は安堵する。沸々と怒りが湧いた。どうしてよそ者に勝手な事をされなくちゃいけないのか。

『なんて事しやがる。おい! お前、降りて来い! 卑怯だぞ!』

 猫がカラスに向かって叫ぶ。カラスに効果はない。優雅にくちばしで羽を整えている。

 猫がユニアルに尋ねる。

『お前はアイツの言葉がわかんねぇのか? ご主人の言葉やオレの言葉がわかるなら、アイツの言葉もわかるんじゃねぇのか?』

《彼ノ言葉ハ登録サレテイマセン》

『登録されてないっていうと、どうなる?』

《彼ノ言葉ハワタシニハワカリマセン》

『なんだよ、使えねぇな』

 猫は頭を垂れ、前足を額に当てた。カラスは猫とユニアルを笑うようにくちばしを開く。それが猫の神経を逆なでした。

『ケッ。なんだアイツは偉そうに。どうにかアイツを痛めつけてやりたいな。おい、なにか良い方法ないか?』

《良イ方法デスカ? 彼ヲ追イ出ス方法デショウカ?》

『そうだ』

《警告ヲ発シ、直チニ退去スルヨウオ願イスルノガイイカト思イマス》

『それはさっきお前がやっただろう。でもアイツは出て行ったか? 行っていないだろう? そんな方法じゃあ駄目だ!』

《デハ、餌デ釣リ、窓ノ外ニ追イヤルノハドウデショウカ?》

『おおう。それはいいな』

 ニヤリと口角を上げ、猫はキッチンへと急いだ。

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