第4話 猫、カラス

『なっなんだよ、アイツ』

 猫は震えながらユニアルに近付き囁く。ユニアルはカラスの落とした羽やゴミを吸い取る作業に夢中だ。

 猫は自分がこんなに怖い目にあったのにと、平然としているユニアルが許せずに前足でユニアルを叩いた。

《ナンデショウカ?》

『ナンデショウカ、じゃあねぇよ。アイツ、どうやって入ったんだ?』

《窓ヲゴ自身デ開ケテ入ッテキマシタ》

『お前、見てたのになんで止めなかったんだよ?』

《止メル必要ガアッタノデショウカ?》

『そりゃお前、オレたちの家に別の奴が入り込んだんだぞ? 追い出すのがオレたちの役目だろうが。ご主人のいない今、オレたちが家を守るんだ』

《ワタシノ役目ハ掃除ト翻訳デス》

『なに言ってんだ? お前はこの家に住んでるんだろう? なら住んでいる以上は家を守る義務がある』

 猫がきつい口調で言う。ユニアルは少し間を置いてから、ランプを交互に点滅させた。

《承知しました》

 軽快な音を立て、カラスの方へと進む。猫が後ろで『待て』と叫んでい気付いていないいない。どうにかしろと言ったが、ユニアルがどうするつもりなのか猫は気が気ではなかった。


 ユニアルはカラスの眼下まで来ると頭上のカメラを動かしピントを調整した。カラスの顔をしっかりと捉える。人間の言葉を発した。

《警告シマス。即刻退去ヲオ願イシマス》

 カラスはユニアルを見つめる。時折首を傾げては小さく鳴いた。

《警告シマス。即刻退去ヲオ願イシマス》

 再びユニアルが退去を迫る。足元で叫んでいるだけのユニアルをカラスは嘲笑うように鳴いた。

《警告シマス。即刻退去ヲオ願イシマス》

 再びユニアルの警告音が発せられると、カラスは不快そうに低い声で鳴き、棚の上に置いてあった陶器の置物を足で押し出した。それはあっけなくも落ちていき、ユニアルの頭上に当たって砕けた。

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