第3話 猫、カラスに侵入される
ユニアルの上に黒い影が乗っていた。
カラスだ。いるはずのないカラスが部屋の中にいた。
『な、なななな、なんで部屋の中にいる!』
猫は毛を逆立てて歯を剥き出しにして威嚇する。よく見ると窓が開いている事に気付いた。どうやら窓は閉まっていたが、鍵が開いていたようだ。カラスが器用に窓ガラスを開けて部屋の中に入ってきた。
『くそ! ご主人が鍵を掛け忘れたんだな』
威嚇を続ける猫に対し、カラスは澄ました顔をしている。猫の存在などないように部屋の中を見渡し、ユニアルから飛び降りると床をぴょこぴょこと跳ねまわる。
『お、おい』
猫がやや震えた声でカラスを呼ぶ。
カラスは小首をかしげ、猫のほうへと跳ねる。
『おい! こっちくんなよ!』
猫はじりじりと足を下げる。自分の方が強いのだと見せる為に毛を逆立て体を大きくする。
カラスには効果がなかった。余計に興味を持ったのか、さらに猫へと足を進める。
『おい! お前もコイツになんか言ってやれ』
猫がユニアルに叫ぶ。ユニアルは外からやってきた来訪者が落とすゴミを吸うのに夢中で気付いていない。猫は絶体絶命のピンチだと思った。
カラスが猫の顔まであとわずかのところまで近付いてきた。猫はもう一歩足を下げる。逆立っていた毛が徐々にしぼんで体がぎゅっと縮こまっていく。猫は牙を見せながらも恐怖に体が固まっていた。
カァ、とカラスが鳴いた。
それは大きな声で、しかも羽を広げたものだから猫からは怪獣のように見えた。
『なっなんだお前は。別に……別にお前なんて怖くねぇぞ!』
猫が精いっぱいの強がりを見せる。しかし体は正直で、尻尾は足の間に挟まり、耳は子猫のように垂れていた。
カラスは猫が怖がっているのを見抜いているようだった。もう一度鳴き声をあげ、広げた翼をはためかせる。猫はその仕草に驚き、後ろに一歩跳ね飛んだ。
カラスが笑うように声を出す。猫の驚いた顔に満足したのか、カラスは猫とは反対側に飛んだ。棚の上へと飛び降りると、そこから猫たちを見下ろしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます