第2話 猫、カラスを揶揄う
『なんだ、カラスか』
猫は黒いものの正体を知り、安心からため息を吐く。落ち着かせる為に逆立った毛を舐め始めた。
窓は閉まっている。カラスが部屋の中に入れない事を猫は理解していた。だから安心し、余裕を見せられている。
カラスが窓ガラスをつつく。入れてくれと言っているようだった。猫はカラスの行動を鼻で笑い、あっちに行けとでも表すよう首を横に振った。
カラスは窓をつつくのをやめない。こっちでつついたら足を跳ねさせてあっちで窓ガラスをつつく。さらにはじっと黒い瞳を向けて来るものだから、猫はだんだんと苛立ちを覚え始めていた。
さて、どうしたものかと猫は首を傾げる。
『ちょっと脅かしてやるか』
イタズラを思いついた猫はカラスが驚く様を想像し笑う。足取り軽くキャットタワーに登ると、そこからカーテンレールに飛び乗り歩く。さながら綱渡りの演目だ。真ん中まで来ると足を止めてタイミングを計った。
窓ガラスをつつく音が聞こえた。
『今だ!』
猫は勢いよく床へと飛び降りた。
大きな音を立てて頭上より現れた猫に、カラスはひどく驚き奇声のような鳴き声をあげて羽をばたつかせた。うまく飛べずに壁に体をぶつける。猫はその様子をおかしそうに見ていた。
ゲラゲラと笑う猫のそばにユニアルが近付いてきた。
『おい、見ろよ。おもしろいだろ?』
ユニアルは猫の言っている事がわからなかったのか、返事をせずに質問をした。
《アナタノ周リノゴミヲ吸イ込ンデモイイデスカ?》
猫が飛び降りたせいで埃やゴミが舞っていた。勝手に吸わないのは猫の周りを許可なく回ると怒られる事をユニアルが学習したからだ。以降は猫に許可を求めている。猫は気分が良さそうに窓をの外を差した。
『そんなの後にしろよ。それより見てみろって。アイツ、驚いてうまく飛べないんだぜ』
大きな声で笑う猫。窓の外では顔を左右に揺らして動かないカラスがいた。
《彼ハドナタデスカ?》
『カラスっていうんだ。アイツらを揶揄うのは面白いんだぜ。前にも同じように驚いてガラスにぶつかった奴がいたっけ。ソイツはすぐに飛んでいっちまったが、コイツはまだ飛べもしない。間抜けだよな』
《カラストハナンデスカ?》
『カラスもわかんねぇのか。本当にお前は物を知らないな。カラスは鳥だよ。頭が良いとか言われるが、どうだかな。オレからしたら馬鹿にしか見えないぜ』
猫は尻尾を揺らし、笑い続ける。カラスはいい加減落ち着いたようで、羽をくちばしで撫でていた。
《彼モ御主人様ノペットデスカ?》
『そんな訳があるか。アイツはただの害鳥だよ。窓には鍵がかかっているからな、中に入ってこれないぜ』
猫はひとしきり笑うと大きなあくびをひとつした。体を捻って窓ガラスに背を向ける。自分のベッドに戻るか、と歩き出すが、窓ガラスの方に向いたままユニアルが動かない。
『おい、どうかしたか』
猫は気になってユニアルのほうを振り返った。
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