第5話 猫、アイツを追い出す作戦を変える
「可愛い! やっぱり買って良かったわ」
ユイカの顔は緩みに緩んでいた。
「やっぱり猫だから動いてるものに反応するのかな?」
「そうね、いつもはユニアルが後ろについて回ってるからこんな姿見れなかったけど、今日はあなたのおかげで良いものが見れたわ」
ユイカはハッとした顔を見せる。ポケットからスマホを取り出して猫に向ける。猫はそれが何か知っている。けれど好きにはなれない。気づけば自分がその箱に閉じ込められているからだ。
猫は急いで物陰に隠れる。そこからユニアルに尋ねた。
『おい! ご主人はなんて言ってるんだ?』
《御主人様ハ、ナニカ良イモノヲ見タソウデス》
『良いもの? なんだよそれは?』
《ワカリマセン。御主人様ニ確認シマスカ?》
『いや、いい。それより、その行動、あまり効果がないみたいだぞ。いい加減止まれ』
《効果、トハ?》
『ソイツが出て行く気配がない』
《ゴミハ取リ終エマシタ》
ユニアルはカンジの回りを回るのを止め、離れた。
「満足したのかな?」
「たぶん?」
ユイカとカンジは笑い合い、部屋へと入るとテレビの前に腰を下ろした。もう話題は別の事に移っていた。
猫はユニアルの前方に飛び出すと前足を伸ばして機体に置く。
『おい、一回止まれ』
ユニアルが動きを止める。
《ナンデショウカ?》
『ゴミなんてどうでもいいんだよ。アイツを追い出さなくちゃ』
《追イ出ストハ?》
『だから言っただろう? アイツは侵入者なんだ。だから追い出さなくちゃいけない』
《ワタシハゴミヲ掃除スルノガ仕事デス》
『おいおい、なに言ってんだよ。いいか? オレの言う事は聞いておけば何も心配ない。アイツがいつかオレとお前を追い出せと言うかもしれないんだぞ。そうなれば飯は自分で探さなくちゃいけないし、寝床も小汚いところになる。お前が食べる、でんき、とやらも外にはないかもしれない。いいか、アイツはオレたちの敵だ。追い出すんだ』
ユニアルのランプが点灯する。
《ソレハ私ノ仕事デハアリマセン》
『お前はオレの舎弟だろ? 舎弟は兄貴の言う事を聞かなきゃ駄目なんだよ、わかったか』
ユニアルのランプが三つ交互に点滅する。
《ドウスルノデスカ?》
『そうだな。お前がアイツの回りを回ってもダメージはほとんどなかった』
猫は口の周りを舐め、考える。うんうんと唸り、なんども前足で顔を擦る。
『そうだ! お前、ご主人の言葉が話せるだろ? アイツに向かって出てけ、ここはオレの島だって言え。そうすれば出て行くだろう。それでも出て行かなければ、そうだな……決闘だ』
猫は尻尾を数回床に叩きつける。ユニアルのランプが交互に点滅した。
《承知シマシタ》
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