第二章 猫とアイツ
第1話 猫、アイツを警戒する
お掃除ロボットのユニアルが来てから一週間が経った。ユニアルは相変わらず猫の後ろをついて回っている。始めの頃と違うのは、猫のユニアルへの接し方が優しくなった事だった。
『よう。今日はご主人がまだ家にいるぜ。珍しい』
《ソウデスネ》
『あの丸い奴、見えるか』
猫が時計を前足で差す。ユニアルは上部のカメラを動かして時計をマークした。
《見エマス》
『いつもはな、あの丸い奴についてる棒の短い方が、こういう奴になる前に御主人はこの家を出て行くんだ。それなのに今日はいる。つまり、お出かけがない日って事だな』
猫は前足で器用に「七」を床に書く。現在の時計は八時三十分を示していた。飼い主であるユイカが家にいるのだから本来であれば喜ばしいのだが、猫にとっては喜べない事情があった。
『いいか? そういう日はな、決まってアイツが来るんだよ』
《アイツ、トハナンデスカ?》
『アイツってのはな、敵だ! オレの縄張りに勝手に入って来る侵入者だ!』
《侵入者トハナンデスカ?》
『侵入者は侵入者だ。ええと、なんだ。敵だよ敵』
猫は何かを思いついたようで、シメシメと企みの笑いを浮かべる。
『ゴミって奴だよ。お前、好きだろ。ゴミ』
ユニアルはランプを点滅させた。
《好キデハアリマセン。ソレガ仕事デス》
『なんでもいいよ。いいか、ゴミなんだから食っていいぞ』
ユニアルはランプを交互に点滅させた。
《承知シマシタ》
猫はしたり顔をし、前足で口を押さえた。笑いを堪えている。
『これで邪魔なアイツがいなくなるぜ』
小さな囁きはユニアルには認識されなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます