第5話 猫、お掃除ロボットに教える

『でんきはうまいのか?』

《ワタシニハオイシイガワカリマセン》

『はぁ、お前はかわいそうな奴だなぁ。うまいもんがわからないなんて』

《ソウデショウカ?》

『ああ、かわいそうだ。よし、待っていろ! うまいもんを食わせてやる!』

 猫は尻尾を伸ばし、キッチンへと向かった。自分の餌置きを通り抜け、流しの下にある戸の前に来ると二本足で立ち上がり、前足を取っ手に乗せて力いっぱい引いた。

 カコン――と乾いた音とともに戸が開き、中のものが丸見えになる。そこには調理器具と一緒に猫の絵が描かれた大きな袋が置いてあった。袋の上部はクリップで留められている。

 猫は前足でそれを手前に倒すと今度は前足から爪を出し、袋を引っ掻いて小さな穴を開けた。穴からは茶色い粒がコロリと床に転がり落ちていく。

 猫はその粒を口に入れておいしそうに噛んだ。

《警告。アナタハスデニ朝食ガ済ンデイマス》

 猫は食べるのを止め、目を細めた。

『なぁに。バレやしないさ。ご主人は少しうっかりしているからな。それにオレは偉いんだ。何をしてもいいんだよ』

 自信満々にそう告げる。そして転がり落ちた粒を咥えると、トタトタとユニアルの前までやってきて落とす。

『ほら、お前も食ってみろ。うまいぜ』

 ユニアルは目の前の粒を見つめた。細い箒のような手で自分の方へと引き寄せるとひゅうと風を吸い込むような音を立て、それを体内へと取り込んだ。

 猫は含んだ笑みを見せるとユニアルへと一歩近づく。

『どうだ、うまいだろう?』

《ワカリマセン》

 即答され、猫は信じられないと尻尾を何度も力強く床へと叩き下ろす。

『わかりませんだぁ? ふん。このうまさがわからないなんて、本当にかわいそうな奴だ。まぁいい。お前も食ったんだ。共犯だからな』

 体を翻した猫は袋に近寄ると再び茶色い粒を口に含み、おいしそうに食べ始めた。

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