第6話 猫、お掃除ロボットに追い回される
猫の腹がじゅうぶんに膨らんだ頃、ようやく食べるのを止めて袋を戸の中に押し込んだ。前足で器用に戸を閉めて、何食わぬ顔で部屋へと戻る。
部屋の真ん中に遠慮もなく寝転がると、顔の周りや腹のあたりを舐め回し、満足そうな顔で毛づくろいを始めた。
そんな猫のそばにユニアルは滑るように寄った。
『なんだよ?』
《アナタノ毛ガ落チマシタ》
『そんなもん食って、腹壊すぞ。腹が減ってるならでんきって奴を食えよ』
《コレガ仕事デス》
ブオォンと吸い込む音が鳴り始め、猫から抜け落ちた毛を吸い込んでいく。猫は煩わしそうにユニアルの動作を眺め、鼻を鳴らすとまた毛づくろいに集中した。
ユニアルは吸い込む音を止める事はせず、猫の周りをクルクルと回り始める。まるで、毛を落としたのが悪い事のように責めるその仕草に、猫はうんざりとして前足をユニアルの体に叩きつけた。
『うざってぇなぁ。あっちに行ってろよ』
《ワタシハ掃除ヲスルノガ仕事デス。アナタハゴミヲ落トシテイマス》
ユニアルは後ろに下がって猫の手を退けると、今度は反対周りで猫の周りを回り始めた。
『オレがゴミとでも言いたいのか?』
低く唸り声をあげる。口元からは牙が覗いていた。
《アナタデハアリマセン。アナタカラ抜ケ落チルモノガゴミナノデス》
『うるせー! 同じ事だろうが!』
毛を逆立てさらに牙を覗かせる。お構いなしにユニアルはただ淡々と自分のなすべき掃除を続けた。
自分がこんなに怒っているのにユニアルは怯える様子も謝る様子もない。猫は怒りをあらわにしながらも、相手にするのも面倒だとその場から歩き出した。
ユニアルは猫の後ろをついていく。猫はぎょっとし、きつくユニアルを叱りつける。
『ついてくるな!』
《毛ガ落チテイマス》
吸い込む音を響かせる。両手を回転させ、口元にゴミを引き寄せる。
猫のイライラは増大していく。しかし言ったところで通じない。抑えるように走り出し、キャットタワーに登った。ユニアルはそばまで来たが、周りをクルクルと旋回した後は、すぐに別の場所に移動した。
寝てしまえば嫌な奴の事を気にしなくて済む。猫はイライラを鎮めるために眠る事にした。
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