第3話 猫、お掃除ロボットに認識される
ユイカは猫を床に下ろすと再び段ボールの中に手を入れた。
段ボールからユニアルを置く為の台座を取り出し、側面の窪んだところに同梱されたコードを差し込んでコンセントに繋げる。台座にユニアルを置くと上部の液晶に青い文字が浮かび上がり充電している事を知らせた。
ユイカは箱から冊子を取り出して読み始める。猫は面白くなさそうに構えと声を上げた。しかしユイカには届かない。鼻唄まじりに冊子を読み続けている。寂しげな猫の声だけが部屋に響いた。
しばらくしてユイカは冊子を閉じた。顔を上げ、ユニアルの上部についている四角いボッチを人差し指で力強く押す。ユニアルから男とも女とも取れる奇妙な音声が飛び出した。
《ハローユーザー》
「おっ、動いた」
ユイカは冊子を再度広げ、読みながらユニアルの上に付いたボタンを押していく。その度にユニアルは丁寧に確認の声を出していった。
「よし。設定完了」
その声と同時にユニアルは軽快な音を吐き、前方から手のような箒を2つ出して準備運動をするみたいに回転させる。
《ハジメマシテ。ワタシハユニアルデス。イマカラ掃除ヲハジメマスカ?》
「今日はもういいわ。掃除は明日からでお願い」
了解と告げるように前方の3つ並んだライトが交互に光る。
《承知シマシタ》
「アニマルコードの登録をお願い」
ユイカはユニアルの前に猫を寄せた。猫はいきなりなんともわからない物体に近づけられ驚く。
《アニマルコード登録。種類ハナニニナリマスカ?》
上部の液晶に選択表示が出る。猫、犬、馬、はてには蛇まであった。
ユイカは猫を選択した。
《承知シマシタ。登録シマス》
ユニアルはランプを交互に点滅させ、上部のレンズを絞ると猫の顔に集中する。
猫はその奇妙な動きに驚き恐怖を覚えたのか、ユイカの手から逃れようと体をよじる。ユイカに逃す気はないらしく、がっしりと体を固定された。
軽快な音が響く。
《登録シマシタ。コレヨリ、発言サレタ言葉ヲ翻訳シマス。ナヲ、コノ翻訳機能ハアクマデ、予想デスノデ、絶対デハアリマセン。御留意クダサイ》
ユニアルは続けた。
《にゃーん。にゃ、にゃーおにゃにゃ。ぐるる、にゃーん》
猫は驚き目を剥いて固まる。お化けでも見ているみたいにじっとユニアルを見つめている。
「もしかして今の猫語? えー、すごい! 伝わってるのかな。どう、わかった?」
ユイカはニコニコと猫に話しかけた。猫は固まった顔のままユイカの方に一度だけ振り返り、またユニアルの方を向く。
乾いた声で小さく鳴いた。
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