3 『晩御飯は災いだ』


 何が起こったのかと言われても、そいつはなかなか表現しにくい。


 まず、中身のない軽いものから始まった。


 プラスチックのトレイとか、空の器とか、フォークとかスプーンとかが宙に浮き上がった。


 『おわ! 超常現象かあ!』


 と、だれかが叫び、悲鳴も上がった。


 誰もいない食堂ではなく、人がいっぱいいる食堂である。


 『わ、わ、わ。』


 まやしんは、とっさにテーブルから身を引いた。


 次に、中身の入っている器が浮き上がった。

 

 比較的軽い、漬け物あたりからである。


 ここの食器は、ほぼすべて、プラスチック製品であり、あまり危険性はない。


 しかし、みそ汁は違う。


 熱いみそ汁は、魅力的ではあるが、傷害を引き起こす力もないわけではない。


 しかし、一杯ならば、まだ、ましである。


 沢山入ったみそ汁の樽が浮き上がったら、それはもう、非常事態である。


 『わあ! 逃げろ💨』


 かの、おばさまが、1番近くにいた。


 『あぴゅない!』


 まやしんは、行き掛かり上、駆け寄らないわけには行かなかった。


 みそ汁樽が、空中乱舞し、熱い熱いみそ汁をばらまくのには、そんなに時間は掛からなかった。


 まやしんは、分厚いコートを羽織ったままだったから、おばさまを庇いつつ、床に伏せていた。


 どばーん!


 と、みそ汁がそこら辺りに降ったのである。


 『あちちちちち!』


 沢山の客が、叫んだり泣いたりした。


 しかし、かの、おばさまは、割に冷静だった。


 『まあまあ。危ないこと。あなた、一応お礼申しますから、退いてくださいませ。』


 『あ。失礼。』


 まやしんは、立ち上がったが、一面みそ汁である。



      🍜











 


 

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