第16話 幻術と雷の二刀使い

 俺達はギルドに戻ると、ギルド嬢にクエスト完了を伝えた。


「いきなりクエスト完了ですか………流石『ノートス寮の英雄コンビ』ですね」


 ―――っ、その名前で呼ばないでくれ!背中がむず痒い!

 それに………


「彼女が一人で全部やりました」


 俺がティアに視線を送りながら言う。


「本当ですか!?」


 それに対しティアは首を縦に二回降る。

 ギルド嬢が驚愕した顔を見せると、彼女はむふーとでもいうかのような少し誇らしげな顔をした。

 

「すいません、つい驚いてしまいました。こちらが報酬です」


「ありがとうございます」


 ルドは報酬金を受け取るとポケットにしまった。


「今夜の宿代はこれで十分か?」


 ルドは腕を組んで考えてから口を開く。


「安いところなら………おそらくは」


「ならOK。早速探しに行くとするか」











――――――――――――――――

 俺達は小一時間程宿を探すと、都合よく見つかったのでそこに泊まることにした。

 木で作られていて、内装はあまり広くないが三人分寝られる場所はあり、布団を引ける。

 

「いやー、パーティ募集張り出したときには朝だったのにもう夕方か………腹減ったな。研修施設の飯が懐かしいぜ」


「そうだね、タダであれだけ美味しいご飯が食べられるからね。今日は安い魚料理とかで済まそうか」


「さんせーい」

 

 その話を傍らで聞いていたティアはやおら立ち上がると


「………ちょっと待ってて」

 

 と言って消えた。

 ………いや、は?消えた?どうゆうこと?


 すると5秒後位に突然何かを抱えて戻ってきた。


「な、なんだそれ?」


「見れば分かるでしょ?宝石」


「………どこから取ってきた?」


「宝石商から盗んできた」


 ―――まじか、、、そこまで倫理観ぶっ飛んた子だったのこの子………見た目によらず恐ろしい。

 俺は手刀で軽くティアの頭を叩く。


「あいたっ」


「いや、盗ってきちゃダメでしょ!」


 俺の答えにティアは首を傾げる。


「なんで?これは商人が私腹を肥やすためのものでしょ?」


「それでもダメだ。私腹を肥やすにしろそこには少なからず努力が存在する。それを蔑ろにする行為はしちゃいけない」


「僕も同意見だ」


「………そこまで言うなら戻してくる」


 するとティアはまた消え………るかと思ったら消えたのはティアではなく宝石だった。

 そして俺の驚いている顔を見たティアは口元を隠して笑った。


「………どういうことだよ」


「貴方達を試してた。それでもこれは知りたかったの。これから仲間として過ごすなら、さらに魔王を倒すなんて大きな目標掲げてるなら尚更」


 なるほどね………確かに俺でもそうする。


「そういうことなら問題ないよ。これで信頼してもらえるならね。でも何で笑ってたんだい?」


「ごめんなさい、あまりにも真面目だったから。でもちゃんと信頼したから大丈夫」


 俺は彼女にさっきまで考えていた疑問をぶつけた。


「そっちはそれならいいんだが、さっき消えたのはどうやったんだ?『イデント』はさっき見せてくれた雷じゃないのか?」


 それに彼女は淋しげに返す。


「私の『イデント』は二つあるの、『雷』と『幻術』」


 ルドは大声で驚いた声を出す。


「は、えっ!?『イデント』が二つ?何で?」


 その質問には彼女は答えず俯く。


「そっか、それならいいよ。追々聞くことにする」


 彼女は元気を取り戻した笑顔で頷く。


「じゃあ夜ご飯食べに行こうじゃないか!」


 ルドは、はぁっと息を吐いた。


「全く君たちはどこまで規格外なんだか……僕が霞むよ。まあいいけれど。店までは僕が案内しよう」


「よろしく!」




 俺達は飯を食べて宿に戻った。

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