第12話 反射鉄拳
俺は坊主の横を走り抜け、鎧に全力で殴りかかる。
………が、無論鎧の攻撃は間に合い、拳を衝突させる。
鎧は使っていなかった剣で俺に斬りかかるが、それを避けて奴の腹部に打撃を見舞う。
そしてその攻防を目にも止まらぬ速度で繰り広げる。
俺も数回奴の打撃、剣を食らったが下がらずこの場で踏みとどまる。
俺に後ろは無い。
俺が下がれば研修生が危ない。
―――こいつ、重そうな見た目してとにかく速ぇな。
バリアと時間操作の『イデント』を持つ坊主共が瀕死になるのも納得だ。
俺はもう一度奴に拳を振りかざし、奴もそれに応じて剣で返す。
激しい撃ち合いの末ついに身体が剣に弾かれ仰け反るが、そこにはすかさずポートの援護が入る。
「『
鎧は回避の姿勢を取ったが、高速で飛ばされた氷の槍が掠り、身体を凍てつかせた。
俺もその隙に身体を立て直す。
「『
その拳は氷ごと鎧を砕き得る一撃。しかし多少は怯んだものの、まだ起き上がってくる。
俺はヤツの反撃を警戒して後退する。
すると禍々しい魔力を持って振りかざされた剣から放たれた技は幸運にも斬撃だった。
―――雑に遠距離攻撃、それは俺の一番対処しやすい技だ!!!
「『
前方に翳された反射板はヤツの斬撃をそっくりそのまま跳ね返す。
不意に降り注ぐ己が放った斬撃に鎧は驚くものの、同じ斬撃を放って打ち消した。
―――クソッ、攻めきれん………坊主共を庇っているのもあるが、それ以上に奴がタフで、そこに魔力量も相手のほうが上ときた。このままじゃジリ貧だ。
攻め手がないわけじゃないがアレをやるには隙を作る必要がある、、、
するとそこに俺は一筋の光を見た。
――――――――――――――――
「クソッ、俺には見ていることしかできないのか!」
俺は自分が力になれない歯がゆい現状に地面を叩く。
しかし先程のダメージが抜けきっておらず立ち上がることもままならない。
やはり鎧の魔力量とタフさは異常だ。教官2人の魔力を足してやっと届くかどうか……
このままじゃ教官達はジリ貧で負けてしまう。
俺は唇を噛んでいると、突如なんのけなしに聞いたことからはじまった会話を思い出す。
『教官の〔イデント〕って何ですか?』
『俺の〔イデント〕は〔反射〕だ。飛び道具だけじゃなく受けたダメージを貯めてぶっ放すことも出来るぞ』
『教官の〔イデント〕って何ですか?』
『私の〔イデント〕は〔物体の引き寄せ〕です』
『物体には人間も適用されますか?』
『はい、他の物に比べたら劣りますが引き寄せることは可能です。あとは引き寄せの対象を自分以外に設定したりできます』
―――よしっ!これなら行けるかもしれない。
俺はもう限界を迎えた身体を無理やり起こす。
限界を超えるのはこの1ヶ月間、何度あった?体力トレーニングの度に限界だと思ってもさらに一周走ってきたじゃないか!あとはそれを実践でやるだけだ!
俺は深呼吸をしながら全身に稲妻のように駆け巡る血液を感じる。
鎧までの距離は約100メートル。今までの時間操作の限界は3倍。でも今なら!
「『身体強化』最大………」
「『
全身が痛い。だがそんなものは関係ない。
「『
走り出すと同時に叫ぶ。
「ポート教官、俺をソイツに引き寄せろ!!!」
教官は一瞬戸惑った顔をしたが、状況を察してすぐに動く。
「『
光芒一閃。俺の限界に教官の加速を加えた最高速度。
俺は飛翔して足の照準をヤツに合わせる。
「食らえぇぇぇ!!」
弾丸となった俺の身体はヤツの肩に命中し、ヤツは大きく仰け反る。
そしてリヴァース教官はその隙を見逃さない。
「よくやった坊主!!!」
教官は腰を落とし、右腕に全魔力を集中させる。
そして放たれる奥義の名は―――
「『
その攻撃は鎧の真正面に命中する。
そして教官の全力の一撃を余さず受けた鎧は崩壊し、魔力を放って霧散した。
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