第8話 基礎四大魔法

 俺は疲れていたのもあってすぐ眠ったおかげか、今日はすぐに目が覚めた。

 俺はベッドから起き上がって歩こうとしたが、昨日走ったのが筋肉痛になって脚が痺れるように痛い。

 ルドもすでに起きていたので、俺達は早速飯に行こうとしたが、そこで突然館内放送が流れてきた。


「ショウ・ミナカミくん、ショウ・ミナカミくん、教官からの呼び出しです。至急教官室に向かうように」


 これは一体何の呼び出しだ?俺は何もやらかしてはいないと思うが………

 するとルドが俺に呼びかけた。 


「何か分からないけれど呼び出しには早く応じたほうがいいよ。教官室は1階の教室があるところの一番奥にある」


「わかった。サンキュー!」


 俺はまだ痛い脚を出来る限り早く動かして教官室に向かった。

 教官室の扉を開けると、目の前にリヴァース教官がいた。 


「俺はなんで呼び出されたんですか?」


 するとリヴァース教官は一拍置いてから答えた。


「坊主、能力の拡張っていうのはな、普通一朝一夕で出来るようなものじゃないんだよ。だが坊主はそれを一発で成功させてみせた。しかしそこまで出来るというのに能力を十分に発揮する他のステータス、特に体力が圧倒的に足りてねぇ。」


 まあ、確かにそれはそうである。直接的な速度の加速ではなく全部を2倍にしているので、今の体力では到底能力を十分に発揮することはできない。


「そこで俺は他の教官と話し合って出した答えが坊主に特別トレーニングをさせることだよ」 


「特別トレーニングとは?」


「体力が尽きるまで全力で走って、本当に倒れる直前になったら回復ポーションを飲んでまた全力で走るって事を繰り返すんだ。かなりキツいとは思うが短期間で体力を伸ばすにはこれしかねぇ」


 ―――まじか、これは中々の地獄を見ることになりそうだ………


「今日の午前の講義は大事らしいから、それだけ受けたら講義は後回しでしばらく何日か走りまくれ」


「分かりました………」


「分かったならいい、さっさと午前の講義を受けてこい。昼飯を食い終わったらもう一度来い」


 俺ははい、と返事をして部屋に戻った。







 




―――――――――――――――

 部屋に戻ると、既に飯を食べ終わったらしいルドが待っていた。


「で、何の呼び出しだった?」


「しばらく他の講義を受けない代わりに体力を鍛えるトレーニングをしろ、とさ」


 ふーん、とルドは言ってから話した。


「確かに君の場合はかなりの特例だからね。あっちも考えて出した結果なんだろう。いいんじゃない?まあ頑張りなよ」


「なんだよ、今日のお前はヤケに嫌味くさいな」


「軽い嫉妬だと思っておいてくれ。僕は研修生1人だけのためにトレーニングを用意するなんてことは聞いたことがない」


 勝ったのはルドだしな。

 でもどちらかというとルドが勝ったというより俺が自滅したって表現の方が適切な気もするが。


「まあいいさ、君がバカみたいに走っているうちに僕は強くなるよ」


 ルドは俺の前に拳を突き出してきた。


「やってみろ!今度はちゃんと戦おうぜ!」


 俺はその拳に自分の拳を突き合わせた。












――――――――――――――――

 講義を受けるために教室に向かうと、すでに生徒とポート教官が待っていた。


「今回は全員間に合いましたね。それでは講義を始めます」 


 今日は大事な講義だと聞いているが一体何をやるのだろうか?


「今日は基礎四大魔法について説明いたします」

 

 めっちゃ重要じゃん!多分これができなきゃヤバいっていうレベルの必須事項じゃん!


「基礎四大魔法とは、『身体強化』、『魔力放出』、『シールド展開』、『魔力探知』です」


「『身体強化』は、全身に纏ったり、攻撃前手など一部の部位に魔力を集中させることで身体能力を底上げする魔法です。そして、『魔力放出』は手や足などから魔力を任意の形で放出する魔法、『シールド展開』は魔力をシールドとして展開して防御に使う魔法です。最後の『魔力探知』は相手の魔力量を測ったり、相手の場所を探知するときに使いう魔法です」


 なるほど、戦闘になければ困るものばかりだ。


「勿論練度に差はありますが、この4つに関しては誰でも簡単に習得できます。さらに多くの冒険者はこれと『イデント』を組み合わせて使うことが多いです」


 組み合わせかぁ………俺の能力は全部に組合せられそうだしルドのはシールドにバリア重ね掛けしたりしても面白そうだ。


「次に発動方法を説明しますが、それには魔力についての説明が必要なので、まず先にそちらから説明します」


「魔力とは、外界から得た魔素を変換し、体内に蓄積されたものの事を言います。魔素は主に食事から摂取しますが、一部の人は空気中に漂う魔素を直接変換することができます。個人の魔力の貯蔵量はレベルアップや鍛錬によって増加させる事ができます」


 空気中の魔素を直接変換とか中々にチートだな………


「魔力は魔法や技を使う時に消費されます。魔力は基本脳で回し、そこから全身に送ることで技を使うことができます。魔法使いにとってイメージが重要なのも、魔力を頭で回しているからだと言われています」


 恐らく脳内で作ったイメージに魔力を通してそのイメージを外界に再現するのが「技」って訳だ。

 するとポート教官は何かが描かれている紙のようなものを配りだした。


「今配った紙に描かれている魔法陣に魔力を通してみてください。そうすると『基礎四大魔法』を習得することができます」


 俺は言われた通りにやってみると、魔法陣が光り、体の中に何かが入ってきたような感覚があった。


「皆さん習得出来たようなので、講義を終わります」


「「「ありがとうございました!」」」


 そして生徒達は教室を出ていった。

 俺がまだ教室から出ようとしないのを見てルドが言ってきた。


「早く部屋に戻らないのかい?昼を食べたら体力トレーニングだろう?」

 

「いや、教官に質問があってね」


「それなら先に帰ってるよ。また後で」


 俺は応、と返事をしてルドが教室を出ていったのを見てからポート教官のもとに行って話しかけた。


「教官の『イデント』って何ですか?」


 すると教官はきょとんとした顔をした。


「急にどうしたんですか?」

 

「いや、単に気になったので」


「普通は生徒には教えないものなのですが今回は色々と特例のあなたなので特別に教えます。私の『イデント』は『物体の引き寄せ』です」


 これはまた応用の利きそうな能力だ。


「物体には人間も適用されますか?」


「はい、他の物に比べたら劣りますが引き寄せることは可能です。あとは引き寄せの対象を自分以外に設定したりできます」


 すげぇ!攻撃にも陽動にも使える攻守隙のない能力だ。元からというより拡張したのだろうけど。


「ありがとうございました!」


 俺は礼を言ってから自分の部屋に戻った。

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