第7話 拡張成功の理由
「ぬぅあぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ニぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙!?」
グラウンド全体に聞こえるくらいデカい声が響き渡る。
うっせーよおっさん………。
「ショウの奴がいきなり技の拡張を成功させただとォォ?」
ルドは困り顔で説明する。
「はい。ショウの『イデント』は『時間停止』だと本人から聞いていましたが、おそらく彼の行ったのは自身を対象とした『時間操作』の類だと思われます」
リヴァース教官はしばらく腕を組み、下を向きながら考えた末、ルドに話しかけた。
「分かった、報告感謝する。それでは部屋に戻っていいぞ」
「ありがとうございます」
するとルドは俺にほら、行くよ。と言ってきたので、俺もヘロヘロの足に力を入れて立ち上がる。
俺達が歩いた先に行ったのは、俺達の部屋ではなく教室の前だった。
「なあ、どうして部屋じゃなく教室の前に来たんだ?」
するとルドは呆れた顔で返した。
「どうしてもこうしても、魔道具『ステータサー』に冒険者カードを通してステータスを確認するためだろう?」
俺の疑問はそれでは解消されないので質問を続ける。
「ステータスって冒険者カードの表に書かれているやつの事だろ?なんで今わざわざ魔道具に通してまで確認するんだ?」
俺の言葉を聞いたルドは、分かりやすくはぁ、とため息をついてからやれやれ、とでも言うかのように首を振って両手を広げた。
「まさか冒険者カードの裏面を見てないとは言わないだろうね。表面に描かれているのはあくまで『
え?あれが総合ステータスで知力Sの俺は知力に関してはカンストしてるんじゃなかったのか?
ルドは俺の心を読んだかのように続ける。
「もしあれが総合的なステータスだったら君は幾らなんでも優秀過ぎるだろう………そこを疑わないとは、もしかしてショウってナルシストなのかい?総合的なステータスはカードの裏面に書いてあるさ」
俺は自分の冒険者カードの裏を見た。
『知力B+』、『筋力D』、『体力E』、『敏捷性C+』、『幸運C+』。
なーんかぱっとしないステータスだな。
しかも前回無かった〇+みたいな表記も増えている。
「君、今ぱっとしないステータスだと思ったかもしれないけれどレベル1にしては君のステータスはあまりにも優秀だ。体力以外はね。表記が変わっているのは才能よりも細かく分かるからってことだろう」
一言余計だ。今日の敗因が体力である事は明白なので否定は出来ないが。
「知力と幸運のステータスは他のステータスより下がり幅が少ないだろう。その2つはトレーニングによって強化することが難しいものだからね」
俺は先程引っかかっていた疑問を口にする。
「レベルってどうやったら上がるんだ?」
「今説明しようと思っていたところだよ。レベルは、モンスターとかを倒した事で得られる魔力をカードに一時的に保存して、魔導具に通すことで倒したモンスターの経験と魔力を冒険者に還元する。それが一定以上になると、レベルが1つ上がるんだ」
おー、めっちゃ細かいな。俺の見ていたアニメではレベルやステータス周りの設定をここまで鮮明に描写されていた記憶がない。
「ステータスを伸ばすには、さっき言ったモンスターを倒す方法、レベルを上げる方法とトレーニングを積む方法がある」
「モンスターを倒すと経験が冒険者に還元され、レベルが1つ上がるごとにステータスに固定値分能力が上昇する。勿論筋トレをして筋肉が増えればそりゃあステータスに反映されるさ」
「なるほど、説明ありがとう。汗かいたからさっさと風呂入ろうぜ」
ルドは頷いて冒険者カードを『ステータサー』に通し、俺も同じようにして、風呂場に向かった。
―――――――――――――――
「うっひょー!昨日も思ったけどここの風呂は広いな!」
ルドは俺に賛同する。
「そうだね。ここなら他の研修生を気にせずにゆっくりできるよ。」
俺達は身体を洗って浴槽に入る。
「あ~あったけ〜………疲れた体に染みわたる〜」
俺が身体を脱力させていると、ルドも
「そうだね~」
と同じく脱力していた。
少しして身体を起き上がらせたルドは俺に聞いてきた。
「ところで、ショウはどうやって『イデント』を拡張させたんだい?リヴァース教官も驚いていたけど、一発で成功させる人間なんてそうそういないよ」
「あぁーそれのことか。それは別に大したことなくてただイメージが出来たってだけだよ」
「僕が聞いているのは『なんでそこでイメージが出来たか』ってことだよ」
さて困った。ここは何と答えればいいのだろう、アニメを見ていただけなんだけれど………
俺はしばらく考えてから答えた。
「俺のいた地域では技のイメージがしやすくなるように『資料』が沢山見られるようになっているんだ。俺はその資料を見ながら『俺だったらこう使うのにな〜』って事を毎日、ずっと考えていたんだ」
「そうなのかい?是非僕もその『資料』を見てみたいな!」
「いや、その資料は俺の住んでいた地域以外の人間は見ることができないようになっている。今は俺も見ることができないよ」
「そうか、それはとても残念だ」
うっ、こんな話をしていたらまたアニメを見たくなってしまうではないか!
自分で能力を使うのもいいけど三人称から見る迫力のある戦闘が懐かしい。
俺達はもうしばらく浴槽に浸かってから外に出て、飯を食べて部屋に戻った。
部屋に戻った俺は、大きく伸びをしてから言った。
「今日は疲れたから早く寝よっと」
「それもそうだね。おやすみ」
俺は泥のように眠りについた。
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