第6話 『Time Accel Two-Fold』

 俺とルドは教室から直接食堂に移動し、昼メシを食べながら午後の実技について話していた。


「今日の実技はどんな事をするんだ?」


「おそらく今日は技の実践だろうね。模擬戦でも組んで生徒同士で戦わせるんじゃないかな?」


 よっしゃ!もう1回技を使えるのか!

 次に技を使うときに試してみたい事があったんだ。

 俺がラーメンのようなものをすすりながらそんなことを考えていると、ルドが言ってきた。


「どうしたんだい、そんなににこにこして?何か良いことでもあったのかい?」


「まあね」


 するとルドが名案を思いついたような顔で合点をして提案してきた。


「もし模擬戦を組むんだったら僕と組もうよ!良いだろう。君とは一度戦ってみたかったんだ」


 俺は自信たっぷりに返した。


「勿論だ!俺も早く戦りたかった!」


 するとルドは手を差し出してきた。


「じゃあ対戦成立だね、よろしく!」


 俺はその手を握り返したが、頭に浮かんだ疑問を口にした。


「あれ、でもこれって『午後の実技が模擬戦である』っていう仮定の上での話だよな………?」


 ルドは気にもとめていないというふうに答えてきた。


「細かいことは気にしなーい気にしない。その時はその時だろう?あまり細かいことを考えるものじゃないよ」


 ま、それもそうだな。俺にはこんな細かいことよりも気にすべきことはいくらでもある。

 それらに比べたら午後の実技がどうかなんて些末そのものだ。


「じゃあ、そういうことでよろしく。食べ終わったらグラウンドに出るよ」


「オッケー!」


 俺は麺を一気にすすって汁を飲み干した。











――――――――――――――――

 俺達がグラウンドに出ると、そこにはリヴァース教官がいた。

 おれがじっと見ているとあちらも気づいたようで、声をかけてきた。


「よう、早いな坊主共!喜べ、今日は模擬戦だぞ!」


 おお、やった模擬戦だ!となる前に1つ言いたいコトがある。

 ―――なんだよ坊主共って………初めて聞いたよ!


「そして相手は自由に選べるぞ!だが授業開始まではあと15分程ある。よく準備しておけ!」

 

 完全にルドの予想通りか………こいつは都合がいい。

 そして念入りにストレッチを終えると、丁度15分がたった。


「それでは、今日の授業は模擬戦をやる。各自ペアを組んで1対1で勝負をしろ。1戦を終わったら俺に結果を伝えて帰ってよしとする。それでは、始め!」


 すると、すでにルドは俺の目の前に立っていた。


「ショウ、準備はできてるかい?」


「誰に言ってる?」


「良いようだね。じゃあ、始めようか」


 俺とルドは一度距離を取って向き合う。

 俺の『イデント』は時間停止だ。これは強力そうに聞こえるが、制約の多く魔力の扱いを学んでいない俺ではアイツへの決定打にはなり得ない。

 しかもアイツの『イデント』はバリアだから仕掛けてくることもないだろう。隙を突く戦法も良いとは言えない。

 じゃあ、やっぱアレ・・をやるしかない!

 

 イメージはできてる、あとは実行するだけだ!

 俺は自分の胸に手を当てる。


「『対象変更チェンジ・ザ・オブジェクト』」


 俺はさらに深呼吸をしてから技名を叫ぶ。


「『時間加速タイムアクセル二倍ツー・フォールド』!!」

 

 能力を使った影響だろうか、俺の周りには青白い稲妻が走っていた。

 俺の全速力は50メートルを7秒、時速約25キロ。その2倍は時速50キロ!

 不意打ちならば止められまい!

 俺はルドに高速で接近し、すれ違いざまに一発与える。 

 ………感触は、悪くない!


「―――ぐぁっ、」


 ルドはよろけて険しい顔をしたが、まだ倒れるには至らない。

 俺は振り返ってルドに向き直り、もう一度高速の打撃を見舞う準備をする。


「―――っ、『不破盾バリア』!」


 ルドは前方にバリアを展開した。

 しかし………これも想定通り!


 俺は側面に回り込んでからルドを殴る。


「クッソっ!」


 まじか!?まだ耐えるのかアイツ……

 これは完全に想定外!流石に前衛志望と言ったところか。

 ならば3度目の打撃を与えるまでだ!!

 俺はバリアの展開が間に合わないルドに向かってもう一度ダッシュして―――殴る!




 しかし、俺の拳はルドに半歩届かない場所で動きを止めた。


「―――――ハァ、ハァ、ハァっ………」


 完全に体力切れか。クソッ!あと少しだったのに………

 全力ダッシュ3回で消費する体力の二倍、前世での運動不足・『体力D』のツケがここで回ってきたか。

 膝をついて地面に四つん這いになる俺を見て、ルドは体勢を立て直した。


「なんだか分からないけど今回は僕の勝ちだね。リヴァース教官には僕が報告しておくよ」

 

 アイツもかなりダメージを食らって限界が近いのか、ゆっくりと歩いて教官のもとに向かっていった。

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