第5話 魔法使いの三要素
「ショウ、おいショウ、いつまで寝てるんだい君ってやつは?」
俺はルドに揺さぶられて目を覚ます。
「………………今何時だ?」
「8時半だよ。講義は9時からだ。急がないとちょっとキツいよ」
転移前の俺は普段、通学時間を考えて大体朝6時には起きる。寝坊しても精々6時半だ。
転移前の日で考えて平日である今日はこんなに寝過ごすのは何か理由があったに違いない。
おそらくは昨日突然死んだり、異世界語を読み込んだり、見慣れない光景を見たり、技を使ったりで脳が疲れていたのだろう。
ルドには悪いが、ちょっと容赦してほしいものだ。
「分かったよ。今起きる」
俺達は大急ぎで朝飯を食い、身支度を整えて1回の教室に向かった。
教室に入ると、教壇にローブを纏った女性がいた。
「30秒アウトです。以後気をつけるように」
「「すみませんでした!」」
「それでは早く着席なさい」
俺は席につくとルドに耳打ちした。
「教官はリヴァース教官じゃないのか?」
「あの人は体術が専門の人だからね。今日みたいな魔法の授業は前にいるポート教官が担当しているよ」
確かにな、絶対リヴァース教官は脳筋タイプの人だろう。
「では、今日は魔法使いの三要素について説明いたします」
すると前の方にいる生徒が手を挙げた。
「はい、なんでしょうか?」
「魔法使いの三要素って『技名』、『イメージ』、『魔力量』のことでしょうか?」
「良い質問ではありますが、違います。それは技を発動する時に必要な要素です。今日説明する『魔法使いの三要素』はどちらかというと、これがなければ魔法使いにはなれないというような適性や才能の話です」
「魔法職は主に後衛サポーターでパーティのバフ、敵のデバフを担当する『プリースト』と、後衛アタッカーで敵の戦力を削ぐ『ウィザード』の2つに分けられます」
前ギルド嬢に言われた全クラスに適性があるっていうのは、この2つをとってみると俺の『時間停止』を『時間操作』に拡張できたら、確かにどちらも担当することは出来そうだ。
「それ以外のクラスで使用する技は、魔法を補助にする場合はありますが、魔法を使わないクラススキルに分類されるため『魔法使いの三要素』がなくても使用することができます」
アニメやゲームで聞いた単語や情報を授業として受けるっていうのはなんだか新鮮な感覚だな………
「それで、その『魔法使いの三要素』が何かというと、『イメージ力』、『理解力』、『才能』です」
―――ん?これって滅茶苦茶俺に適正ないか?
だって転移前妄想は毎日欠かさずにしていたし、理解力はそこそこの私学に通っていたからあるうえ技のためだと考えると理解への努力は努力ですらない、さらに才能はステータスや周りの反応を見る限り高い方なのだろう。
「ちょっとそこ、何をにやにやしているの?」
しまった!自然に頬が緩んでしまっていたか。ルドは隣から注意される俺を意地悪そうに見つめている。
しかしこれに関しては俺が悪いので甘んじて受け入れることにしよう。
「………話を続けます。『イメージ力』と『理解力』は体力や筋力に比べ、トレーニングで伸びる量は少ないです。さらに、『才能』は当然トレーニングで伸ばすことは不可能です。そのため、他のクラスほど数の多くない魔法使いは重宝されます」
「ですから魔法を使いたい気持ちも分かりますが、適正クラスから離れてまで魔法職を目指すのはお勧めできません」
「これで、今日の講義を終わります。午後の実技に備えていてください」
生徒達は一斉に頭を下げ、ありがとうございました、と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます