第5話 指輪の能力
グリース・・・精神支配・・・浮遊・・・使い魔召喚
捕虜になって移動中も本を読むことを強要されている。
歩きながらは読み辛く、それに何ページもあるこの中から自分の指輪を探し当てるのは至難の業だった
はぁ・・・疲れた・・・1日歩きどおしで、食事も水もままならない移動・・・カラサギ鳥を最後に食べれていてよかったと思える
捕虜の中での私語は禁止とされている為、僕らは兵士の問いかけにだけ口を開けることになっている
「小僧、どこまですすんだ」
「このページです・・・」
「チンタラ読んでんじゃねーぞ」
「はい」
こうやってたまに兵士が様子を見に来ては、小言を叩かれる
この荒れた不毛の土地を何日歩けど、景色に変わり映えはしない。
今日の野営の準備を始めた兵士達と荷物を降ろす許可を貰える僕ら。
捕虜になって早5日が経つと、僕らもそれなりにこの捕虜としての生活に慣れ始めていた。
荷物を降ろすなり、本をまた読み始めるが・・・
「坊主、こいよ」
兵士の一人、僕に本を渡したハンツという男が野営の時に僕を呼ぶようになった
「はい」
荷物を捕虜たちのいる場所に降ろすと、そのままハンツについて行く。
このハンツという男は、兵士の中では歳が若く20歳ぐらいのようなのだ。周りの兵士からも雑用を押し付けられている事から新人なのだと分かる。
その押し付けられた仕事を僕に押し付けてくるのが日課なのだ。
「はぁ~・・・だりぃ」
「さぼってるとまた叱られてしまうんじゃ」
「この量を俺一人に任せるのはおかしいだろ・・・」
歳が近いおかげか、ハンツは僕に親しみを持ってくれているのかいつも愚痴を聞かされる
一通り仕事を終えると、食事をとることになるが一応それなりに手伝った為に食事を少し分けて貰えるのはいいことだ
「ほら食えよ、それ食って明日も手伝えよな」
「はい、頂きます」
薄い麦がゆだが、食べないよりはましだ
食事をしながら、指輪の話をしてくれるのもいいことだ。
ハンツの指輪は呼び水という名前らしい。これは水を生成できる為に炊事を任されているようだが日に4回しか使用できないようなのだ。
指輪の行使は日に回数制限があり、それは使い続けることで回数が増えていくようだと聞く。それこそ命の光を吸収し増やして行くと言っている。
名前さえ知っておけば、それを口か心で唱えるだけで指輪の能力を行使できる為に早々に自分の指輪が何者なのか判定しなければならなかった。
他所の街だと、指輪を授与される儀式のときにはだいたい鑑定士がつく為に自分の指輪が何者なのか貰った時に分かるはずらしいのだが、カルラ村は貧しい村だった為に鑑定士がいなかったし呼ぶことも出来なかったそうだ。
「早くお前の指輪の名前分かるといいな、もしすげーのだったらお前が奴隷になる前に俺が買い取ってやるからな」
「奴隷・・・はい、お願いします」
捕虜ということだが、恐らくこのまま奴隷落ちなのだろうか・・・この先の将来のことが不安になる・・・。くそっ・・・僕はこの指輪で冒険者になるつもりだったのに・・・
「その為に早くお前の指輪が何者なのか分かればいいな」
「はい」
そしてハンツに開放されて、一人本の時間に入る・・・他の捕虜の人達は既に移動の疲れで眠りこけている。
僕だって一緒だった。みなよりも体格が小さく、でも背負う荷物は同じという中で同じ距離を移動している。疲れはあり眠い。
はぁー・・・もう眠たいけど、このページだけ終わらすか・・・
だが・・・そうはいかない、捕虜となった自分に課せられているのは指輪の名前を知ること。だが、命令されているからでなく、自分でも早くこの指輪で何が出来るのか知りたい気持ちもあり毎日頑張っていたのだ。
飛び火・・・反響・・・テレポート・・・
それはいきなりの事だった。
重い瞼を必死に開けて、読めているのか夢なのか起きているのかという狭間。
テレポートという言葉を読んだ瞬間、左手の指にはめた指輪が熱く疼いた気がした。
「えっ・・・」
テレポートが名前であり・・・能力?
名前が分かったとて、その名前に未だピンときていない自分は早まる鼓動を抑えて、名前が羅列されたページから更に読み進めた先、能力が書かれている場所へと読み飛ばした。
テレポート・・・テレポート・・・どこだ・・・
小刻みに震えるページをめくる指。テレポートという響きに、胸が高鳴り気持ちを抑えられないでいる。
必死になりすぎて、息をするのも忘れるぐらいだ。
そして見つけるテレポートの能力のページへと・・・
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