第3話 捕虜

夕食のカラサギ鳥を食べるとお腹いっぱいとまでは行かないが、3日ぶりの満足した食事をとることが出来た。


弓の手入れをしながら、指輪を撫でてみたりと何が使えるのか試行錯誤を繰り返しているときに外から馬の足音がパカパカと聞こえてきた。


指輪に集中していたのもあって、気が付かなかったが周りも何やら騒がしくしていたのだと今気が付く。


ばあちゃんは、朽ちた窓から外を見る。


「馬かい?」


「なんだろ?」


ばあちゃんとそんな会話をしていると、鎧に身を包んだ兵士が2名家の中へガシャガシャと音を立て入って切る。


建付けの悪い扉をそんなに、力強く開けるもんだから外れてるよ・・・。と思ったが、兵士の威圧感に言葉を出せずにいた。


「一層ぼろい家だなこれは、おい外にでろ。村の中央まで歩け」


入って来た兵士は、それだけいうと僕らを立たせようとする。


「え?なんでしょうか?」


「黙っていう事を聞け、殺すぞ」


兵士は剣を抜きながらそういうので、ばあちゃんはそれ以上何もいわず大人しく従うようだった為僕も後ろに続いた。


兵士に背中を押されるように、村の中央の広場。今日指輪をもらった神殿がある場所にたどり着くと村人はそこに集められていた。100人ほどの規模の村の為、集まっていたとしても村人を囲う兵士の数の方が多い。


「おい、指輪をつけてるならあっちだ」


兵士は僕の指輪に気づくと、指輪をつけている着けていないかで分けるように村人を固めていた。


「ばあちゃんっ」


「大丈夫だから、いう事をききなさい」


ここでばあちゃんと離れるのは心細かったが、兵士にまた背中を押され指輪をつけている方へと誘導される。


村人100人のうち、指輪をつけているのは僕合わせ20人程度


「これで全員か?」


「ハッ」


「よし、あとは―――――」


兵士とその上官のような人がこそこそと喋っているのが聞こえる。


その間に、指輪をつけていない村人がどこかに連れていかれ始めていた。


「お前ら聞け、この場所は荒野の砂塵が占領した」


先ほどコソコソと喋っていた上官、赤いマントに金の鎧を身に着けた50歳ぐらいの男性がそう告げる


それを僕ら20人は狼狽えながら聞いている。荒野の砂塵とは隣国のガラハッド帝国の兵士達なのだが・・・その蛮行から共和国では悪名高く知られていたからだ。


荒野の砂塵と聞いた瞬間、周りの捕虜となった大人たちは一層狼狽え始めた。


「お前らは、俺達の捕虜として連れて行く。無謀な事は考えるなよ」


説明の最後に釘を刺すように、そういうと僕らは手に縄を撒かれはじめる。


「ちょっとまってくれ!俺の妻は!」


指輪から水を出せる、村の水売りの男性が、僕ら以外の村人の様子を聞く。


「捕虜としての価値はない。全員処刑だ」


その冷たい、落ち着いた口調から発せられた無常な言葉


「おっおい!」


水売りの男性が飛びかかろうとしたタイミングで兵士に取り押さえられた時だ・・・


ボンっと音が経つと同時に、ここから西の空が赤みを帯びて煙が立ち込め始めた。


「まさか・・・慈悲はないのか・・・」


隣にいる指輪をくれた神官のおじいさんがその光景を見ながらつぶやく。


僕にもその光景が何なのか分かった。


「うぉら!てめーら!」


取り押さえられた男性も察し、押さえつけながらも暴れまわる。


「ふむ・・・反抗の兆しありだな・・・こいつも殺せ」


上官のマントをつけた男はそれを見ると、またその冷徹な口調から発せられる言葉のまま男性は目の前で首を落とされた。


僕は恐怖で言葉も出ず、そのまま足が震えて何もできずにいた。


「お前らもこうなりたくなったから、大人しくしておくことだ」


残りの指輪付きの19人は、それからは兵士の指示に黙って従うようになった。




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