第三章 第四話
エキサイティングサーチ。動画投稿サイトで様々なことにチャレンジして、多くのファンを得ている。そして、毎日投稿する動画は次の日までに百万回再生される。高評価数も常に一万回もされている。
そんな彼らのマネージャーとして就任する。前を歩く大輔の後ろを着いていき、マンションの一室の長い廊下を歩いていた。ダークブラウンの木材で構成された床は高級感がある。僕が賃貸で借りているワンルームの部屋と比べるまでもなく、良い部屋だ。
こんな良い部屋を生活の場ではなく、エキサの撮影スタジオとして利用している。感じる必要のない経済的格差を感じてしまう。
「まさかコウがマネージャーになるとはな。初めて聞いた時、びっくりしたぜ」
「僕もだよ。勤めている会社とエキサが契約しているのは知っていたけど、まさかマネージャーに就任するなんて」
それに前の部署は総務部だったし、と僕が笑うと、大輔も笑っていた。数年ぶりに話したというのに、昔と全く変わっていない。
そんなことを思っていると、大輔はぴたりと足を止めていた。長い廊下の終わりを告げるドアが目の前にあり、大輔は全く迷いもなくドアを開けた。
廊下とは違う空気が僕の全身をなぞるように通り抜けていった。僕は大輔に連れられ、部屋の中に入った。
僕の部屋よりも数倍にも広いLDKに、動画で見たものが丁寧に整えられている。綺麗に整列されている。
「新しいマネさん来たよ」
大輔がそう言うと、テーブルを囲んで打ち合わせのようなことをしている他のメンバーが同時に立ち上がった。
そして、金髪の男が近づいてきた。エキサのリーダー、ゆげだ。本名は弓削だった気がする。僕は手に持っていた紙袋に入った茶菓子を差し出し、頭を下げた。
「よろしくお願いします。今年度からお世話になります。横塚康介です」
「こちらこそよろしくお願いします。リーダーのゆげです」
ゆげも丁寧に頭を下げると、僕が差し出した茶菓子を両手で受け取った。そして、顔をあげたゆげはにこりと口角もあげた。
後ろで立っていたしゅんとけんも近づいてきた。
「しゅんです。よろしくです」
「けんです。これからよろしく!」
二人とも丁寧に頭をさげた。
動画投稿のグループと聞いて、常識がない人の集まりだと思っていた。挨拶も整理整頓も。だけど、当たり前のことを当たり前にできる。その上で動画投稿を行っている。
なんてすごい人たちなのだろうか。
僕はこれからこの人たちを全力で支えていく、と覚悟を決めた。
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