第二章 第五話

 俺と正道は合同説明会で三か所だけブースを回った後、会場を後にした。そして、正道の誘いで、近くにあったファストフード店に立ち寄った。俺も少し腹が減っていたため、正直ありがたい。


 俺はポテトとコーラを購入し、正道は限定のハンバーガーとポテト、メロンソーダを購入していた。窓際の席に腰をかけると、俺はポテト一本だけ手に取った。そして、目の前に座っている正道を見た。もう正道の灰色のスーツは見慣れた。


「正直意外だったぜ」


「何がだ?」


 正道はハンバーガーの包み紙を剥がし、口に運ぼうとした手を止め、目を丸くしていた。


「正道が公務員を志望しているってこと。お前ならなんかお笑い芸人とか動画配信者とかの有名人を目指しているのかと」


「そんなわけないだろ。俺のこと過大評価しすぎ」


「過大評価はしてない。あくまで目指しているって言っただけで、有名人になれるとは言ってない」


「そうですかい」


 正道がそっぽを向いて、ハンバーガーに食らいついた時、俺は「それで」と話を繋げた。正道の顔と共にハンバーガーがこちらを向き、「ん?」と口にハンバーガーが挟まったまま声を出した。相変わらずノリが分からない。あとハンバーガーを口から離してから答えろ。


「なんで公務員になろうと思ったんだ?」


「まぁ、安定を求めてだな」


「安定かぁ」


 俺ははぁ、とため息を吐いた後、コーラをストローで吸い出した。強烈な炭酸が口の中を広がっていく。

「まぁ、翔もやりたいことないなら、公務員目指してみればいいじゃね。当たり前だけど、採用試験があるから簡単には受からないけどな」


「考えてみるわー」と俺は正道に答え、数本だけポテトを掴み、口に放り込んだ。

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