第二章 第二話
スマホのアラームが鳴り、俺は目を開けた。時刻は八時半。大体、二時間半くらい寝てしまったらしい。
父さんと颯太から頼まれた出汁の試飲から逃れた俺は、動画を観ながら眠りに付いてしまっていたらしい。念のためにアラームをかけておいて良かった。今日の午後からの予定に企業の合同説明会があるのだ。
スマホを手に取り、内カメラで自分の髪型を整えた。
今回の合同説明会には友人から誘われたから行こうと思っただけで、自分から行くつもりはなかった。いくら就活の早期化が進んでいるとはいえ、大学二年生の夏頃に動き出すのは意識が高すぎる。まだ動き出す時期ではないと思っている。だけど、やりたいことも決まっていないし、友人の誘いに乗った以上、行くしかない。
真っ白な長袖のワイシャツのボタンを閉じ、スーツのパンツを履いた。そして、ネクタイを首輪のように付けて、俺はジャケットを羽織った。大学三年生の夏頃からスーツを着る頻度が高くなると思うと、億劫になった。
部屋の外に出ると、一階のキッチンから物音が聞こえる。油を焦がしたような臭いが二階まで届いてきているから、父さんと颯太がまだ家のキッチンで何かを試作しているのだろう。また試飲を頼まれたら面倒だと思い、ダイニングキッチンの横の廊下を足早に駆け抜け、俺は家を出た。
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