第一章 第八話

「美由に似合いそうなのは、濃い目のブラウンだと思うんだよね」


 沙希は試着コーナーで濃い目の栗色と薄めの栗色のチェック柄のスカートを美由の腰のあたりに押し当てながら言った。首を傾けて、様々な角度から確認している。既に試着している白色のニットとの親和性を確かめている。


 だが、美由はちらりと自分が着てきた茶色のセーターを見た。


「そうかな。私、あんまりブラウンって似合わないと思うんだよね」


「そんなことない」と沙希は跳び上がるように美由の言葉を遮った。そして、もう一つ用意していた濃い目の栗色のスカートを美由に押し当てた。


「ちょっとこのスカートはちょっと恥ずかしいかも」


 美由は押し当てられた美由のスカートを眺めながら、顔を少し赤らめた。一つ目のチェック柄のスカートは足首あたりまで丈があったというのに、二つ目の無地のスカートの丈は膝上あたりだ。


「でも、それくらいの丈のほうが良いと思うんだよね。美由は身長も高くて、脚もすらりと長いからね。その脚を全面に出していったほうが絶対良い」


「えーそうなのかな」


 恥ずかしくて両手で口を抑えて、沙希を下から舐めるように見た。しかし、身長の高さも脚の長さも沙希の方が上なので、そんなことを言われて余計に恥ずかしくなった。

 

 沙希が美由からスカートを離した。


「まぁ、私の話はあくまで参考程度に。美由はどれがいいと思う?」


 沙希は両手で隠されていない美由の目をじっと見てきた。真剣な眼差しを向けてくる沙希に、真摯に向き合わないといけないと美由は思った。

 それに今日は自分の殻を破りに来たんだ。いつまでも恥ずかしいなんて言っていられない。


 美由は顔から両手を離して、数秒前まで自分に合わせられていた二つのスカートを見つめた。


「じゃあ、無地のスカートにする」

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