八
昼休みの中庭。寒空の下、ようやく顔を合わせた小夢はどこか気もそぞろ。あからさまに集中力を欠いて、心ここにあらずだった。
「最近、なかなか時間が合わなくて参っちゃうな」
静かに頷かれる。どことなく関心すら逸れてそうだった。
「俺はやることもないから予習復習くらいしかやってないけど、小夢は最近どう」
さり気なく近況を尋ねようとするが、なぜだか黙りこんだまま、草食獣のように手にしている自家製サンドイッチを食んでいる。こういう態度自体は珍しくはなかったが、今日の態度にはどこか不自然さがあった。
「なにか、あったのかな」
元より、腹芸など得意ではない。ならばと単刀直入に尋ねれば、小夢は地面に目線を落とした。ほんの少しの不安が窺える。
「良ければでいいけど、俺にできることがあれば」
直後に繋がれる温かな手。
「いてくれれば、いい」
どこか訴えるような声。
「いてくれないと」
震える掌。それを感じて握り返す。
「わかった」
待とう。きっと話してくれるはずだとそう言い聞かせて、小夢の存在を感じ続けた。
「ずっと、いっしょにいてね」
※
その日もまた、小夢は先に帰っていった。
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