六
「元丘先輩らしいですよ。冴木さんと一緒にいたの」
小夢が先に帰ったのを確認して教室を去ろうとしたところで、いつも取り次いでくれる金髪の女子が唐突にそんなことを言った。
「元丘って、俺と同じクラスの?」
「はい。その元丘先輩です」
思い浮かべるのは茶髪の級友の顔。たしかに社交的で顔が広いし、小夢と交流がないわけではなかったが、接点と呼べるような接点はあっただろうか。だがたしかに、元丘もまた最近早く帰ることが多かったな、と思い出す。
「こっちははっきりと目撃者もいます。確認しました」
「そっか」
元丘だったら妙なことにはならないだろう。さほど長くない付き合いからそう判断しようとする。しかし、一点。小夢が笑顔を浮かべていた。この伝え聞いた噂が、かぎりなく疑惑を大きくした。そして、なによりも事実として陽介との時間よりも優先して、元丘とともにいる。これをどう判断すればいいのか。
「大丈夫ですか、先輩」
「うん。あいつだったら、大丈夫だよ」
口ではそう告げつつも、確かめなくてはならないな、と心の中でため息を吐いた。
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