第5話:結局、エッチできなかったし。

その一連の出来事はイブの夜にはじまったことだった。

その時はめちゃ驚いたけど、あとで思うとこれはきっと日頃から頑張ってる俺へ

の神様からのプレゼントだと思った。


生きてる時から俺のことを好きだったって言った「春日野 葉見かすがの はみる

俺への未練を残したまま、あの世に行くのは嫌だとイブの日に俺のマンションへ

やってきた。

で、俺の部屋に置いてあったラブドールの中に彼女の魂が入ってしまった。


俺に会えたことでもうこの世に未練はなくなったのかと思ったら俺とリアルに

会えたことで余計あの世には生きたくなくなったみたいだ。

俺と一緒にいたいって・・・。


だけど生前の葉見のことは俺はなにも知らない。

だから好きだったって告白されてもピンとこないわけで、いきなりそうだから

って言われたからって彼女に対して恋愛感情はまだ持てない。

まあ一緒に暮らしてたら、いずれは愛が芽生えるのかもしれないけど・・・。


俺のラブドールはただのラブドールじゃない。

よそ様んちのラブドールと大きく違うのは動いてしゃべること、人間と同じ

ように意思表示をするし表情もちゃんとある。

葉見の魂が中にいることでただに表情のない人形じゃなくなった。

感情も持っている。


そもそも俺は自分の誕生日のお祝いにラブドールを買っただけで着せたい

衣装を着せて可愛い顔を眺めて、もちろん目的のセックスができたら・・・。

葉見が中にいてもラブドールのは違いないんだからまだ愛情とか持てなくても

俺は遠慮なくセックスするから・・・。


そこらへんがラブドールだから人間の女とは違う・・・けど中身は人間の女。

なんだろう、愛情がないんだからセフレってことでいいのか?


俺の誕生日をラブドールの中に入った葉見と一緒に祝ってテンションマックスで

そのままラブドールを抱くのか?


「痛くしないでね・・・優しくね・・・中身は私だから」

「それに私、まだ男性経験ないんですもん」


「わ、悪かったよ・・・優しくするから」

「なんでラブドールに気を使わなきゃいけないんだよ」

「めちゃ複雑なんだけど・・・」


「いいです、入れてみて?・・・とりあえずエッチしてみないと分かりませんから」

「はい、どうぞ・・・入れて?」


「もういいよ今夜はやめとく・・・なんか、その気がなくなったから・・・」


「いいんですか?」


「もう寝る・・・」


「じゃ〜私も一緒に寝ます」


結局、エッチできなかったし・・・ラブドールと一緒に布団に入ったものの

眠れない。

やっぱりやっとけばよかったかな・・・。


とくに何も変わらない朝が来て俺は目覚し時計に頼ることなく目覚めた。

昨夜のことがまるで絵空事だっただったみたいだ。

イブの夜のファンタジーってか。


でも横を見たらラブドールが横たわってるし・・・。

まだすやすや寝てる・・・ん?ラブドールなのに寝るのか?

と思ったけど、中に葉見の魂が入ってたんだ。


俺は少しだけ期待してた。

葉見の可愛い声で爽やかに俺を起こしてくれることを・・・でも「起こしてね」

って言っておかないとそれは期待できないよな。


俺はいつものように勝手に起きて朝食も自分で用意して寝てる葉見をマンションに

残したまま会社に出勤した。

連れが一人増えても、俺自身の生活感は変わらなかった。


仕事中、葉見のことが気になったけど、それもしかたない、スマホの使い方も

教えてないから連絡も取れない。

かと言って会社を早退するわけにもいかないし・・・。


一週間くらいなら有給も取れるけど、それも限界がある。

俺のいない間、葉見は何をして過ごしてるんだろう?

テレビの見方は教えてきたけど、それでも気になるよな。


で仕事が終わってその帰りにスーパーに寄って買い物してマンションに帰る。


「ただいま・・・葉見・・・ただいま?」


「お帰り圭ちゃん、おつかれ様」


迎えに出てきた葉見を見て俺は少しホッとした。

俺を出迎えた彼女は俺に抱きついてクチビルにチュってした。


お〜クチビルにチューしてくれた・・・少しだけ進歩してる。


つづく。


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