第6話:なんてこと言うの君は。

で仕事が終わってその帰りにスーパーに寄って買い物してマンションに帰る。


「ただいま・・・葉見はみる・・・ただいま?」


もうラブドールって意識がなくなってきてる。


「お帰り圭ちゃん、おつかれ様」


迎えに出てきた葉見を見て俺は少しホッとした。

俺を出迎えた彼女は俺に抱きついてクチビルにチュってした。


お〜クチビルにチューしてくれた・・・まじ進歩してる。


うん、めっちゃ癒される・・・こういうの俺はずっと憧れてたんだ。

男ゴコロを分かってるじゃないか。

まあ、そりゃそうだよな・・・葉見は俺のこと好きなんだから・・・。

こういう生活悪くない。


「早くあがってあがって・・・ゆっくりして」


このぶんだと日にちを置かずして俺も葉見を好きになるなって確信した。


で、問題はここからなんだ・・・葉見は俺にハグとチューをしたあと

いきなり服を脱ごうとした。


「え?・・・おいおい・・なにやってんの?」


「私、料理も上手くないし家事もろくにこなせないし、できることって言ったら

これしかないかなって思って・・・それにエッチしそびれたでしょ?」


「いや、今ゆっくりしてって言ったじゃん」

「待て待て・・・俺さ、今仕事から帰ってきたばかりだぞ?」

「そんな気分にならないし仕事で疲れてるし、だいいち腹だって減ってるし、

それにゆっくり風呂にも入りたいし・・・」

「そういう一連の生活習慣をクリアしてからするもんだろ?そういうことって」


「圭ちゃん、なにするか分かってる?」


「分かってるよ、エッチだろ?セックスだろ?・・・性行為だろ」


「私は圭ちゃんが帰ってくるの待ってたんだよ・・・お風呂にも

ちゃんと入って準備できてますよ・・・」


「あ〜そうですか・・・俺はぜんぜん準備できてませんけど」


「君はさ、いいよ・・・昼間ゴロゴロしてヒマ持て余してるからさ」

「俺は仕事して精神的にも肉体的にも疲れてるの」


「え〜抱いてくれないんですか?」

「エッチしたくて私を買ったんじゃないんですか?」


「あのさ・・・君、葉見?だよね?」


「もちろん葉見です・・・基本的には葉見です、オール葉見です」

「私の魂も精神もこの体に宿ってしまってるからもうそのものです」


「だから、今の私にできることは・・・」


「ハイハイ、分かった」

「君の気持ちはありがたいし嬉しいんだけどさ、さすがに俺でも今はその気

にはならんわ・・・悪いけど」


「そうですか?・・・じゃ〜したくなったら言ってくださいね」


そう言って葉見は脱ぎかけた服をまた着た。


「あのさ、もし君がただのラブドールだったらイヴの夜にエッチしてたかもな」

「ラブドールの中に葉見がいるって思ったから俺は躊躇ちゅうちょしちゃ

ったんだ」

「それに痛いって泣くから・・・」


「やっちゃえばよかったんですよ、無理やりにでも・・・」


「なんてこと言うの、君は・・・」

「葉見って生きてる時からそんな大胆な子だったの?」


「好きな人とエッチするのになに躊躇ためらうことあるんですか?」

「大事ですよ・・・そういうコミュニケーション」


「まあ、それは分かるけど・・・なんかすごく積極的じゃないか?」

「ちょっとさ、君へのイメージ変わっちゃうな・・・もう少しナイーブな

子かと思ってたから・・・」


「それは圭ちゃんの勝手な思い込みです」

「私けっこう積極的なんですよ」

「だって圭ちゃんに可愛がってもらわないと私が気持ちを告白した意味ないじゃ

ないですか?」

「それに、いつかはするんでしょ?エッチ」


「んまあ・・・いつかはね・・・けどもうちょっと君に慣れるまで時間くれる?」

「俺がその気になったら言うから・・・」


「退屈・・・ヒマ・・・憂鬱・・・心が寂しがってる・・・震えるような切なく

なるような激しい愛が欲しい」


「な、なんだよ・・・怖いよ、いちいち大袈裟なんだよ」


そんなに暇ならバイトかパートにでも行けばって言いたいけど無理だし。

こんなことなら普通にラブドールのままでいてくれたほうがよかったかも・・・。


でも、やっぱり複雑。


つづく。

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