第3話:あなたのそばにいちゃいけないですか?

「お誕生日おめでとうございます、成田さん・・・ハッピーバースデー、

ハッピークリスマス〜」


「お〜・・・ありがとうラブちゃん〜・・・・・」


そう言ったが圭史は手に100円ライターを持ったまま固まっていた。


黙って見ていようと思った葉見はみる圭史けいしが自分の誕生日を祝う姿を見て思わず声を

かけてしまっていた。


「・・・・・・」


「う、うそお〜〜〜〜」

「なに?・・・今喋った?」

「喋ったよね・・・誕生日おめでとうって言ったよね、たしかに?」


「待て、待て、待て、待て・・・ホラーか?それともポルターガイスト?」


「ラブドールが喋った?・・・いやいや喋るわけないよな」

「でもたしかに喋ったよな?なんで喋ってるんだよラブドールが・・・ありえない

だろ?おかしだろ?」

「それとも俺がおかしいのか?、大丈夫なのか俺・・・あまりに彼女が欲しく

て、そんなにエッチがしたくて・・・ついに幻聴か?


「あ・・あの・・・ごめんなさい」


「・・・・・・・」


「わ、また喋った」


「あのう・・・落ち着いてくれませんか?成田さん」


「おおお、落ち着いてるよ」


「すいません、このまま黙って見てようと思ったんですけどつい嬉しくて声かけ

ちゃいました」


「最近のラブドールって喋る機能付きなのか?」


「違いますって」


「私、春日野 葉見かすがの はみるって言います」


「え?・・・誰?かすがの?・・・はみる?・・・って誰?」


「成田さんと同じテナントビルの会社に勤めてて事務員してました」

春日野かすがのは春の日の野原って書いて、葉見はみるは、葉っぱを見るって書きます」


「いきなりで、びっくりなさったと思いますけど成田さん今から私が話すこと

ちゃんと聞いてくださいね」

「男性の中には人の話ちゃんと聞かない人多いですから・・・」


そこで葉見は彼がよく行くカフェで圭史を見かけて一目で好きになったこと

や自分が交通事故で亡くなったこと・・・魂だけになって現世を彷徨ってること

なんでラブドールに入ったかってことを説明した。


「そうなんだ・・・そんなことがあったんだ、君のことは知らなかった」


「私の片想いでしたから」


「で、その君の魂はあの世とやらに行けなくて現世を彷徨てったってわけ」


「私がこの世に心残りがあったからだと思います」

「どうしてもあの世に行く前に成田さんに会いたくて・・・」


「で?俺と会えたし・・・もうこれで心残りなくなったってことなんじゃないの?」


「それがですね〜私、成田さんに会っちゃったら余計未練が残ったって言うか

もう完全にあの世には行きたくなっちゃったんです」


「あのさ、あの世があるどうか俺も分からないけど普通聞くところによると

亡くなった人の魂ってあの世に行って浄化されて来世で生まれ変わるんだろ?」


「その話、よく聞きますね」

「でも私生まれ変わりたくなんかないです」


「私は成田さんのそばにいたいんです」

「ね?このまま、あなたのそばにいちゃいけないですか?・・・ここに残っちゃ?」


「そうだね、俺には君がここにいてくれたほうがメリットあるかな?・・・まあ

いてくれるのはいいけど・・・君はラブドールだから俺、エッチいことやっちゃう

けど・・・いい?」


「え〜?いきなりそれは・・・ちょっと」


つづく。

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