第2話:迷わずラブドールにの中に。

不慮の事故に遭遇して魂だけになった葉見はみる


ほんとは、あるのかないのかも分からないあの世とやらに行くはずだった彼女の魂。

でもまだ圭史に未練があった葉見は現世に魂を留めたまま彷徨っていた。

あの世とやらに行く前に、せめて圭史に会ってから行きたいって思った。


イヴの日の昼間、葉見の魂は圭史のマンションに来ていた。


とうぜん圭史は仕事に行っているからマンションには誰もいない。

だからか葉見は迷わず圭史の部屋に入った。


「成田さんの部屋・・・案外、綺麗にかたずいてるんだね」


とりあえず部屋の中をぐるっと見渡した。

ベッドが部屋の隅にあって、窓際に机とパソコンがあった。

男性の部屋らしくシンプルでショーケースの中にはフィギュアやモデルガンが

プラモデルが飾ってあった。


で、当然ソファーに置かれた大きめの女の子の人形が葉見の目に入った。

葉見でもそれが何かはすぐ分かった。


「成田くん・・こんな人形が趣味なんだ・・・」

「この子を毎日眺めて、しゃべったりしてるの?」

「ちょっとキモいけど・・・きっとお付き合いしてる彼女がいないからなんだ」

「一人暮らしって寂しいもんね」

「私がそばにいてあげられたらな・・・」


そこで葉見はふと思った。


もし、この子の中に入ることができるとしたら毎日成田くんといられる?」


そう思うと葉見は迷わずラブドールにの中に入って行った。

葉見の魂にとってはぴったりのスペース。

手を動かしてみたら思うように動くし、足も動く・・・顔だって回るし

瞬きもできた・・・試しにと思って声を出してみたら、ラブドールのクチから

自分の声が漏れた。


葉見は嬉しかった・・・もしかしたら動く私を見て成田くんは喜んでくれるん

じゃないかと・・・。


そんなことが起こってるなんで、まったく知らない圭史・・・仕事からの帰り

ケーキ屋さんによってSサイズのバースデーケーキを買って帰った。


べつに誕生日だからって、ケーキでお祝いしたかったわけじゃないけど・・・

なんとなく細やかなことにも関心がなくなったらダメな気がした。


「誰も祝ってくれないからせめて自分で自分を祝ってやってもいいかな」


そう思った。

でマンションに帰ってきて圭史は一番にラブドールに「ただいま」の挨拶をして

から冷凍パスタを温めてひとり寂しく食べた。


しばらくテレビを見てから買って来たバースデーケーキを箱から出した。

小さなテーブルに置かれたバースデーケーキ。

圭史はケーキに立てられたロウソクに火をつけた。


「メリ〜クリスマス・・・誕生日おめでとう、俺」


圭史は笑顔で自分にそう言った。


そしたら、いきなりだった。


「お誕生日おめでとうございます、成田さん・・・ハッピーバースデー、ハッピー

クリスマス〜」


「お〜・・・ありがとうラブちゃん〜・・・・・」


そう言ったが圭史は手に100円ライターを持ったまま固まっていた。


つづく。




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