もしかしてだけど――3
時折振り返る、修司と知香に見守られながら、俺と彩芽は山道を登る。
再スタートから約一〇分。おそらく、全行程の四分の三は超えただろう。ゴールは確実に近づいている。
だが、喜んでばかりはいられなかった。スリップダメージのように、俺の理性がゴリゴリと削られているからだ。
というのも、運動することで彩芽の白肌が赤らみ、掻いた汗でしっとりと濡れているのに加えて――
「はぁ……んっ……ふ、ぅ……」
と、辛そうだけど、どこか色っぽくも感じる吐息が聞こえてくるのだから。
とてつもなく
邪念がムクムクと膨らんでいくのを感じて、ブンブンと頭を振る。
ダメだダメだダメだ! 彩芽は頑張っているんだぞ!? なにを
理性と欲望の板挟みに
「ふぅ、熱い」
俺が煩悩と戦うなか、彩芽がジャージのファスナーを下ろした。
チラリとそちらを見て――俺は絶句する。
なにしろ、汗で濡れた体操服から、パステルピンクのブラジャーが透けていたのだから。
バイクのエンジンみたいに鼓動が昂ぶり、茹だってしまいそうなほど顔が熱くなった。マンガなら、俺の頭からは湯気が立っていたことだろう。
俺は慌てて顔を逸らした。
「ファ、ファスナーは下ろさないほうがいいんじゃないかな?」
「え? どうしてですか?」
「そ、それは……」
彩芽に聞き返されて、言葉に詰まる。
『下着が透けているからだよ』と教える勇気は俺にはない。あるはずがない。かと言って、彩芽を説得できるだけの嘘も思いつかない。
いくら考えても打開策が見つからないので、俺は諦めるほかになかった。
「……いや、変なこと言ってゴメン」
「いえ、お気になさらず」
そう返しながらも、挙動不審な俺を不思議がるように、彩芽は小首を傾げていた。
ファスナーを上げさせることに失敗した現状、俺にできるのは、彩芽の胸を見ないことだけだ。
よそ見をするな、俺! 前だ! 前だけ見てろ!
自分に言い聞かせて、山肌を睨み付ける。
しかし、男の
ハッとして視線を戻し、罪悪感とともに猛省する。けれど、煩悩にそそのかされて、またしても彩芽の胸を見てしまった。以後、ローテーション。
ご褒美とも拷問ともとれる時間は、それから一五分ほど続いた。
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