第41話 仲間を追って
レヴァンたちと鉢合わせた翌日。
僕はイーリスの家の玄関で、出かけるみんなを見送ろうとしていた。
「お昼までには帰ってきますね」
「やっぱり僕もついていこうか?」
「私たちで、行くから」
「エミルは楽しみに待ってて」
昨日の今日で少し心配になるが、やんわりと断られてしまう。
本人たちが嫌がるときまでずっとついてくわけにはいかないか。
「わかったよ、気をつけてね」
女性だけで話したいことや見に行きたいところでもあるのかもしれないと思い、外出するみんなを見送った。
それにしてもリフィがさっき言ってた楽しみに待っててとはなんだろう、おみやげでもあるのかな? せっかくなら甘い物がいいな。
……いや、待ってるのを楽しんでてくらいの意味かもしれないから、変に期待するのはやめておこう。
お昼までに帰ってくるとのことだし、今からおそらく3時間くらいだろうか、それまで待ってるとしよう。
僕1人きりだけど、なにをしていようかな。
僕は自室のベッドで寝転がっていた。
みんなが出かけてから庭で素振りや家のなかの掃除を行い、そして今は休んでる。
1人だと退屈に感じてしまう。以前はこれが普通で、平気だったはずなのに。
「もうお昼はとっくに過ぎたのに、みんな遅いな」
寝転んでいる身体の向きを変えながら、ぽつりとつぶやく。
ここから少し離れたところの教会の鐘の音がお昼を告げたのはかなり前のこと。
そのときは帰りが予定より少し遅れてるのかなくらいに思ってた。
それから時間がだいぶ経ち、さすがに心配になってくる。
1人で静かに待っているからか、よくないことが頭をよぎってしまう。
「もしかしたらなにかあったのかも、こうしちゃいられないよ」
僕はベッドから起き上がると、ショートソードを
家を出た僕は、昨日から続く曇り空の下で、この街の大通りを目指して走っている。
みんながいる場所に当てはないけど、まずはこの先の冒険者ギルドから行ってみるつもりだ。
あそこならみんなを知ってる人もいるし、もしいなくてもなにか話を聞けるかもしれない。
「おや、少年じゃないか。こんなところで会うなんて偶然だね」
走っていたら聞き覚えのある声がして立ち止まり、そちらを振り向く。
そこにはにこやかに笑う丸眼鏡の女性、シャムニーが立っていた。
会うのはこれで3度目だろうか、彼女はこれまでと変わらずにっこりと笑ってる。
「ごめん、急いでるんだ」
普段だったらゆっくりと話でもしたいところだけど、今は早くみんなを探しに行かなきゃ。
僕はそのまま走り出そうとするが。
「おやあ、どうしたんだい。もしかしてキミの仲間がどこにいるか、探してたりするのかな」
「どうしてそれを?」
状況を知ってるかのようなシャムニーの言葉に、走り出すのをやめて聞き返した。
「人間とエルフと獣人の可愛らしい3人の女性だよね。キミと親しげに歩いているのを前に見かけたことがあって覚えていたんだよ。そしてつい先ほどにもその彼女たちの姿を見たわけだ」
「みんなを!? 詳しく教えて!」
僕が聞くと、シャムニーの口元の笑みがさらに広がった。
「もちろんだとも。この街を出て少し歩いたところに廃墟があるのはご存知かな?」
「廃墟? わからないけど、そこにみんながいたの?」
「ああ、そうだよ。行き方を教えてあげるから、ぜひ向かってみるといい」
僕はその場所へのおおよその道を教えてもらった。
知らない場所だしなんでそんなところにとは思うけど、みんながいたというなら行かない選択肢はない。
「ありがとう、シャムニー。じゃあ行ってみるよ」
「いやいや、礼には及ばないよ。それではさようなら」
笑顔のシャムニーに背を向けて、僕は廃墟を目指し走り出した。
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