第19話 ランクアップ
エアライドを覚えた翌日。僕たちは冒険者ギルドにやってきていた。
「エミルさん、Dランク昇級おめでとうございます!」
職員のミリアムが嬉しそうに昇級を教えてくれる。僕はついに冒険者ランクがあがることになった。
「これほど早く昇級するなんて、エミルくんはやはり優秀ですね」
イーリスは感心するようにほほえんで。
「力でいえばエミルはもっと上なの間違いないし、あとは実績だけだよね。ランクあげてくためにもさらに依頼をこなしていっちゃお!」
リフィは笑顔でこれからのことをはりきりながら。
「エミル、やったね」
セレナは自分のことのように、それぞれ喜んでくれた。
「うん、ありがとう。みんなのおかげだよ」
昇級も嬉しくはあるけど、なによりみんなが祝ってくれることが嬉しいな。
「普通は1ヶ月かそれ以上かかる場合が多いですし、エミルさんのように1週間で昇級するのはきわめて
依頼書がある壁の方に手を向けるミリアムに、僕は「わかったよ」と答えた。
みんなといったん別行動になり、僕は1人で依頼書を見に行こうとしていた。
その途中、冒険者のおっちゃんたちに呼び止められる。
「もうDランクに上がったんだって。まったく、大したもんだ」
「期待の新人はやはり違うな。今度メシでも一緒に食おうぜ、ガッハッハ」
「うん。一緒に食べるの楽しみにしてるよ」
にこやかに笑顔を向けるおっちゃんたちに、僕も笑い返す。
そして依頼書が貼りだされている壁の前まで行くと、そこにはリフィがいた。
僕より一足先に来ていたようで、真剣な表情で依頼書を見ている。
「なにか気になるものでもあった?」
「あっ、エミル。えっとね、この依頼なんだけど、私たちで受けれないかな?」
声をかけると、リフィは上目遣いで遠慮気味に頼んできた。
その様子はなんだかいつものリフィらしからぬ弱々しい感じがする。
依頼書を確認してみると、失踪者を探す内容だった。
とある村で女性の失踪が続いており、彼女たちの行方を探してほしいとのこと。
依頼者は村の人たちで、依頼自体はつい先日出されたもののようだ。
女性の失踪か、もしかしたらリフィは同じ女性として思うところがあるのかもしれない。
この依頼を受けて解決できたらいいなと思う。いなくなった女性たち、依頼した人たち、そしてなによりリフィのために。
「わかった。イーリスやセレナにも聞いてみなきゃだけど、僕からも頼んでみるよ」
「ほんと? ありがとう!」
ようやくいつものリフィらしい笑顔が見れて安心した僕は、話をするため2人のもとへ行こうとして。
「ここで……見つかるといいな」
リフィが小声でなにかをつぶやいた。
「え?」
「ううん、なんでもないよ」
笑いながら首を横に振るリフィ。
途中の部分はよく聞き取れなかったけど、見つかるといいみたいに言ってた気がする。
失踪した人たちのことかな? たしかに見つけられるよう、頑張りたいところだ。
冒険者ギルドのなかにある席に、イーリスとセレナを見つける。
2人の前には
「あら、エミルくんとリフィちゃんも、なにか食べますか?」
イーリスが僕たちに気づき、聞いてきた。
「いや、それよりも話をいいかな?」
そう言って僕は席につき、リフィも座る。
「話って、なに?」
「つぎの依頼のことなんだけど――」
セレナに尋ねられ、僕はさっき見た依頼の説明をする。
「僕とリフィはこの依頼を受けたいと思ってるんだけど、どうだろ?」
「失踪者探しですか。たしかに見つけてあげたいですけど、このような依頼は、きっと難しいものになりますよ?」
僕の話を聞いたイーリスは心配そうにしていた。
難しいものになるというのは、実際にそうだと思う。
依頼内容が調査だからDランクでも受けられるけど、それは簡単というわけじゃない。
むしろそのランクに合ったモンスターを倒す方が楽かもしれない。
「できれば受けたいんだけど、ダメ?」
リフィが悲しそうにうつむきながら、か細い声を出す。
「難しいのはわかるけど、それでも見つけたいんだ。いなくなった人も、待ってる人も。きっと心細いだろうから」
僕は気づけば勢いのままに、席から立ち上がっていた。
「難しいとわかったうえで受けるということでしたら、私もいいと思いますよ」
イーリスは両手を合わせ、やわらかくほほえみ了承してくれる。
「それならよかった。セレナはどう?」
「エミルが受けたいなら、いいよ」
僕が聞くと、セレナはあっさりうなずいた。
「みんなありがとう。頼りにしてるよ」
僕はお礼を言って、ホッとする。
リフィが受けたがっていたし、無理なら2人で受けるのも考えてはいたけど、みんなが協力してくれるなら心強いな。
そう思いながら周りを見ると、リフィと目が合う。
その表情はさっきまでの悲しそうなものでも、いつもの元気そうなのでもない。
ぼんやりとでもいった様子で、こちらをじっと見ていた。
「どうかしたの?」
いつもとは違う雰囲気だったので聞いてみる。
もしかしたら、なにか気になることでもあるのかな?
「えっ……んーん、なんでもない」
リフィは目をぎゅっとつむり、ぶんぶんと首を横に振る。
「えっとね、エミル。ありがとうだよ」
いつもよりおとなしい声で、少しひかえめにリフィは笑った。
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