VR・FPSで野生のプロに鍛えられた僕、最強クラスの実力に気づかないまま、姉妹VTuberに招待されて大会に出場することになりました。リアル世界でメスガキと美人お姉さんに翻弄されながら優勝めざします
第43話 第3ラウンド開始。廃病院での近接戦闘だ。僕とアリサとジェシカさんがいれば勝てる!
第43話 第3ラウンド開始。廃病院での近接戦闘だ。僕とアリサとジェシカさんがいれば勝てる!
僕達は廃病院の一室で試合開始を待つ。出入り口は白い半透明の光で覆われていて、ラウンド開始までは別室に移動できない。
ぽつぽつと仲間が同室に出現し始める。
おっ。ジェシカさんもサブマシンガンだ。
他の人達はさっきのマップで気に入ったらしく、マシンガンを装備している人が多い。狭いマップでは使いにくいんだけど……。
お。アリサも現れた。
こっ、こいつ、スナイパーライフルを装備してきやがった……!
基本的にスナイパーライフルは広いマップで伏せて使用し、遠距離の敵を狙撃する。狭いマップで近距離相手に使う物ではない。
だが、アリサはスナイパーライフルをゼロ距離射撃して敵を一撃で殺すという、いわゆる突砂(突撃するスナイパーの略)だ。操作難易度は極めて高いが、ゼロ距離なら相手の体のどこに当てても敵を殺せるから、上級者が使えば対人最強だ。
BoDⅢのオンライン対戦末期は凄腕の突砂で溢れかえっていて、「敵に見られたら死ぬ」地獄だったなあ……。
「アリサ、どうしよう。いつもどおりで行く? 対人戦オンリーの殲滅戦なら下手に連携するより、アリサが好き勝手やった方が勝てるよね?」
「うん。ジェシー、いいよね?」
「ああ。いつもどおりやれば、アリサとカズなら上手くいくさ。さっさと勝って一緒にドンカツを食うぞ!」
「はい!」
『戦士達よ栄光を掴め』
システムボイスがラウンドが開始を宣言した。
みんな一斉に駆けだす。さすがに僕やアリサほど速くはないが、みんなよちよち歩きを卒業して普通に走れるになったようだ。
「カズ、行こ! 敵の足速いし、多分、速攻しかけてくる」
「うん。僕達で敵の足を止めて、味方を動きやすくしよう」
「ふたりとも頑張れよ。オレは状況を判断して、劣勢な方を手伝う」
「りょっけー!」
「了解!」
アリサが左側の最短ルートを選んだから、僕は右側のルートを選んだ。
すべての部屋は輪っかのように連なっているから、挟撃される事態だけは避けたい。
アリサの背中は僕が護る。
待合室を抜けて通路を横切り、手術室らしき部屋に入り、素早く索敵。
タイミング的に相手が最速で突撃してきたら、次の部屋で接敵する。相手は足が速いから、ここで接敵する可能性もある。
しかし、敵はいない。
別ルートを進んだか、こちらの速攻を警戒して待ち伏せか……。
いや、相手チームは、BoDシリーズ経験者の僕よりも判断や動きだしが遅いんだ。
足下に物が散乱しているから思うように移動できないのかもしれない。そういうことにしておく。
遠くから銃撃音が響いてきた。
みんな最短ルートの方を選んだのか。
一度死ねば復活できないルールなので、あっという間に状況が動く。
キルログを見ると、僕達のチームは劣勢のようだ。
次々と味方が倒されていく。
「げ、一瞬で残り4対8になってる……」
キルログを見る限り、敵は出会い頭にRPGを撃ちこむ作戦のようだ。
やはり敵チームにもFPS経験者がいるのかもしれない。アスリートだってゲームするよな。それか、配信コメントや会場の応援で、RPG特攻を勧められたのかもしれない。
相手がFPS初心者でも、通常の兵士よりも遥かに速く駆けよってきてロケランぶっぱなしてきたら、僕も危うい。
僕は部屋の中央に対戦車地雷を設置する。
複数の足音が接近してくる!
3人の敵が室内に突入してきた。
しかも、入り口付近に対人地雷クレイモアが設置されている可能性を考慮して、跳躍してきた。
全員RPGを持っている。
数で不利。
撃たれた瞬間に死が確定する。
一瞬で全員を撃ち殺さないと負ける状況だ。
けど、僕にそんな技量はない。
だから僕は、予め並べておいた対戦車地雷に向かって、すでに手榴弾を投げている。
手榴弾が爆発し、地雷が一斉に誘爆。
ゴバァァアンッ!
うるさい効果音とともに画面が真っ白に染まる。
「よし!」
隣室で伏せた僕の体力も半分減ったが、3人の敵を同時キルした。
「僕、アリサ、ジェシカさんの3人で4キルすれば勝てるんだから、残りノルマは1。あとは、サブマシンガンで倒す……」
残りの敵を探して移動を開始。
隣の部屋は無人。
さらに隣の部屋に入ろうとしたところで、室内で爆発。
敵がふたり吹っ飛んで壁に叩きつけられた。
アリサがC-4爆弾でふたりの敵を倒したとキルログに表示された。
当のアリサはすでに部屋にいない。
他の敵を探し求めて引き返していったのだろう。
ああ。信頼されてるな。
僕がここにいるから、アリサはこっちに敵がいないと判断して引き返していったんだ。
挟撃される心配がないと、僕を信頼してくれた……!
よし、アリサを援護しに行こう。
と、部屋を飛びだしたところで、敵と鉢合わせ。
なんで?!
廊下の物陰に潜んでいた?!
アリサ、敵を見逃してるって!
咄嗟にサブマシンガンを撃つ!
同時にバシュッと、RPGの発射音。
さすがプロスポーツ選手。反射神経が半端ない。
僕は直撃を喰らわなかったが爆風に巻きこまれてダウン。
無人だと思いこんで、油断した~~っ。
近距離に敵が潜んでいた場合を想定して、ヘッドショットできる位置に銃口を向けておいたんだけど、相手の動きが速すぎた。
復活なしルールだから、僕はここで終了だ。一応、死ぬ前に撃ったし、敵の体力を少しは削れたと信じるしかない……。アリサ、ジェシカさん、頑張ってくれ……。
僕はゴーグルを外して隣のゲームスペースを見る。
アリサが頭を小刻みに振り、ライフルを大きく動かして奮闘している。
歩いたかと思えば走りだし、身体全体を前後左右に傾けて位置調整したり、せわしない。
下半身は足でリズムを取る音ゲーやっているみたい。
今時のゲームがeスポーツなんて言われる理由がよく分かる。
これは、疲れそうだ。
一方、反対側のゲームスペースを見ると、ジェシカさんはサブマシンガン型コントローラーを目線の高さに構えて、ゆっくりと歩いている。様になってるなあ……。特殊部隊の兵士って感じだ……。
なんか、全身タイツも、水中から上がってきたばかりの海兵隊特殊部隊の衣装に見えてきた……。
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